前回の徹底解説シリーズでは、スーパーが提唱したライフスパンとライフスペースの可能性が説明され、理論として充分に両者が統合されていない課題と、学習や意思決定といった概念は方向性として合っているけど統合できない現状認識が示されました。では何によって統合できるかというと、適応(adaptation)だ!というのがサビカス先生の主張です。
学習や意思決定は適応の一部
学習や意思決定といった概念を前節で提示していたのは、両者を批判するのではなく、方向性そのものは合っていると提示することが目的だったのでしょう。その上で、適応が統合する概念として優れている理由を端的に示しています。
小気味よい言い切りです。学習も意思決定も適応の一要素なのだから、ライススパンとライフスペースの領域を統合する概念としては適応を使った方がいいでしょ、ということです。上記の一文を含む一段落には引用がなく、その後の2段落も含めた本節全体にも一切の引用がありません。適応の可能性に対するサビカス先生の想いが溢れ出ている箇所と言えそうです。
職業心理学のレリバンス
この後もサビカス先生は、適応が統合する概念として優れている理由は説明します。
さらにはラテン語での語源を引いて説明します。
特にこの箇所は、引用なしで提示できるのはスゴいですね。私のような素人が真似すると痛い目に遭いそうな気がします。
個人と環境との相互作用
キャリアに関する概念には個人と環境との相互作用が含意されるということは渡辺先生の編著である『キャリアの心理学』でも言われていることです。キャリアという概念にこのような点が内包されるとはいえ、サビカス先生によれば適応という概念は両者の相互作用をより強く強調しているようです。
仕事を取り巻く環境が多様で複雑で多文化的であるという現代のビジネス環境を考えれば、適応に着目することの重要性は増しているとサビカス先生は捉えているのでしょう。