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【読書メモ】キャリア・ドリフトという停滞:『働く人のキャリアの停滞』(山本寛編著、第3章・鈴木竜太著)

キャリア・ドリフトとは、文字通りキャリアが漂流する状態を意味して、社員のキャリアへの関心が極めて薄い状態です。入社後すぐに訪れる「こんなはずじゃなかった」というリアリティ・ショックを解消し、組織に馴染んで(組織社会化)、仕事を一人で一通りこなせるようになってから訪れる課題です。

キャリアの停滞感という意味合いでは、先日取り上げたキャリア・プラトーと同じです。ただ、キャリア・プラトーが中年の危機をはじめとしたキャリア中期以降に訪れる傾向があるのに対して、キャリア・ドリフトは20歳代中盤から30歳前後に訪れるというタイミングの違いがあります。

キャリア・ドリフトには流され型漂い型の二つがあると著者は指摘しています。その違いは、キャリアの見通しを示すキャリア・ミスト(霧)の濃淡によって分けられます。加藤・鈴木(2007)に掲載されている下図が本章でも掲載されているのでマトリクスで考えるとわかりやすでしょう。

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ここで着目したいのはそれぞれのタイプにおける情緒的コミットメントのスコアです。本章によれば、いずれも五件法のスコアで、漂い型(2.58)、流され型(2.82)、方向探索(3.99)、目標追求(4.26)というように、キャリア・ドリフトにある状態の場合には約1.5ポイントも低い状況です。情緒的コミットメントは離職と関係がありますので、リテンションに影響すると考えられるでしょう。

では、どのようにキャリア・ドリフトに対応するのでしょうか。ここでの処方箋の一つは、先日取り上げたキャリア自律です。以下の論文にもあるように、キャリア自律は情緒的コミットメントに正の影響を与えていることが明らかにされており、キャリア・ドリフトを健全に解消すると言えるのではないでしょうか。


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