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【論文レビュー】リアリティ・ショックを扱った博論:中島(2021)

リアリティ・ショックについて調べようと思っていたところ、ここ数年以内に博論でリアリティ・ショックを扱ったものがあることを見つけました。概念を理解するきっかけとしては誠にありがたい限りです。

中島智子. (2021). リアリティ・ショックによる離職意思の緩和に関する研究. 兵庫県立大学大学院経営学研究科博士論文.

個人から見た組織社会化のプロセス

本論文ではリアリティ・ショックについて、離職研究組織社会化研究の双方から背景を描いてくれています。ここでは個人的な興味関心に合わせて組織社会化について見ていきます。

組織社会化は、初期において段階モデルとして研究が進んだとされています。孫引きで恐縮ですが、段階モデルとは「新人が外部者から内部者に移行する際に起こる変化の連続や時期を説明するモデル」(Bauer, Morrison & Callister, 1998)であり、Buchanan、Porter、Feldman、Scheinなど錚々たる初期の研究群がこの系譜にあるとしています。

 このように段階の数は研究によって異なるが、個人の組織社会化は仕事の経過とともに進行し、発達的な段階を経ると仮定された点はいずれの研究も共通していた。段階ごとにそれぞれの特有の課題が存在し、個人はその各段階の課題を達 成することによって組織社会化が進んでいくという仮定だった。主に、職務経験のない新人を対象とし、新人がどのように組織の一員となっていくのか、受動的な立場から能動的な立場に成⻑していくのかということが、発達理論に基づいて述べられていた。

p.60

段階モデルにおけるリアリティ・ショック

では、こうした個人の組織社会化を段階モデルとして捉えた場合においてリアリティ・ショックはどのように位置づけられるのでしょうか。

 組織社会化研究の段階モデルにおいて、リアリティ・ショックは、組織参入直後から発生する「組織に適応するための初期課題」として捉えられている。またリアリティ・ショックとは、先述の期待適合理論や RJP では主に期待と現実とのギャップとして定義・測定されてきた概念だったが、段階モデルではギャップによって引き起こされた心理状態までを定義に含んでいる研究が多い。そして、リアリティ・ショックとはどのようなプロセスで起こるのかということが論じられたのである。

p.61

組織社会化研究におけるリアリティ・ショックでは、個人がいかにして新しい環境としての組織に適応するのかというプロセスに焦点が当たっていると考えられます。

リアリティ・ショックを緩和するもの

ここまででリアリティ・ショックが段階的に生じるプロセスが明らかになったわけですが、こうしたリアリティ・ショックを緩和するものはなんでしょうか。

本論文でのレビューでは、組織社会化戦術、プロアクティブ行動、一般生自己効力感が挙げられています。またプロアクティブ行動との強い相関という観点からビッグ・ファイブの外向性開放性も間接的には関連するものと言えるかもしれませんが、こちらについては特性ですので採用時点での留意する必要があると言えそうです。

感想

博論って査読論文とはまた趣が異なる「作品」感があっていいなぁと思います。モティベーションが高くなったところでこの辺でおしまいです。ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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