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【読書メモ】文献レビューで押さえるべきポイントは何か?:『組織論レビューⅢ』(組織学会編)

本書の第八章は、「過去の展望から未来の問いをどのように導き出すか」というタイトルで服部泰宏先生が文献レビューについて書かれています。研究における文献レビューについて改めて学べる贅沢な章です。

文献レビューとは何か

先行研究で明らかにされていることをレビューすることは、研究の最初のステップであるとともに基盤となるプロセスです。本書では、文献レビューに関する以下の定義を和訳して紹介されています。

既存研究の体系(あるいは諸体系)の検討を通じて、理論の構成要素を特定し、それに挑戦し発展させることで、その体系を分析し統合する、1つの研究(Post et al. 2020 p.352)
p.201

レビュー論文の五つの機能

個人的には文献レビューは嫌いではないので、なかば好んで行ってしまうのですが、レビュー論文となるとハードルが高いなと思ってしまいます。本書では、レビュー論文の機能を、①要約、②統合、③批判、④研究領域の創造、⑤方向性の提示、の五つに大別しています。服部先生によれば、このうち④以外はレビュー論文として必ず網羅すべき機能だとされています。

これらの機能はレビュー論文の機能として挙げられていますが、研究プロセスにおける文献レビューにも大いに参考になると思いますので、以下にそれぞれのポイントをまとめます。

①要約

既存の先行研究での議論を要約する

②統合

先行研究での様々な議論や論点を統合して新しいモデルや概念的枠組みを提示する

③批判

論文間の矛盾や先行研究の不備に対して批判を加える

④研究領域の創造

異なる研究領域として見做されていたものを独自の視点で連結させて新たな研究領域として提示する

⑤方向性の提示

①②③に基づいて研究領域の将来の方向性を提示し新たな研究を誘発する

こうしてまとめてみると、既存の研究群を羅列するだけでは先行研究とは言えないことはよくわかるかと思います。中原先生のブログを合わせて読まれるとより理解できるでしょう。


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