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【徹底解説】キャリア・アダプタビリティの起源(1)Superから受け継いだもの:Savickas(1997)

キャリア・アダプタビリティは関心、統制、好奇心、自信の4つの次元から構成されるもので・・・というキャリコンの試験とかでもされる説明は2012年の尺度開発論文が出た後から市民権(?)を得たものです。今回、取り上げるのはサビカス先生がキャリア・アダプタビリティを最初に提示した論文であり、ここには4つの次元も尺度も何も登場しません。ではサビカス先生はキャリア・アダプタビリティをどのような想いで提示したのでしょうか?本論文をマニアックに読み解くことで背景に迫ってみたいと思います。今回は、サビカス先生の師匠の一人であるドナルド・スーパーから何を受け継いだのか、について探ってみます。

Savickas, M. L. (1997). Career adaptability- An integrative construct for life‐span, life‐space theory. The career development quarterly, 45(3), 247-259.

スーパーの理論

ドナルド・スーパーのキャリア理論はライフスパン・ライフスペース理論(life-span, life-space theory)として結実しています。この理論では個人が果たす人生の役割の発達について論じています。

The four segments in the life-span, life-space approach to comprehending and intervening in careers (individual differences, development, self, and context), constitute four perspectives on adaptation to life roles.
(ざっくり和訳)
キャリア(個人差、発達、自己、文脈)を理解して介入するためのライフスパン・ライフスペースアプローチの4つのセグメントは、人生の役割への適応に関する 4 つの視点を構成します。

p.247

スーパーの理論は、①キャリア発達理論(Career Development Theory)、②発達的自己概念理論(Developmental Self-Concept Theory)を経て③ライフスパン・ライフスペース理論へと発展しており、人間の発達がその基底にあることが読み取れます。

本論文でサビカス先生は、①キャリア発達理論は職業選択としてのキャリア論に人間の発達という観点を加えた点に価値があり、②発達的自己概念理論では外的キャリア重視ではなく内的キャリア(特に自己概念)を強調した点が評価でき、③ライフスパン・ライフスペース理論において職業だけではなく生活全般を射程に入れた点に価値があったと端的に位置付けています。

キャリア・アダプタビリティが受け継いだもの

こうした発達という捉え方を受け継ぎながら、サビカス先生が着目したのが適応(adaptation)です。

Adaptation serves as a bridging construct to integrate the complexity engendered by viewing vocational behavior from four distinct vantage points.
(ざっくり和訳)
適応は、職業行動を4つの異なる視点から見ることによって生じる複雑さを統合するために架橋する構造として機能する。

p.247

後の論文でVUCAという複雑かつ変化のスピードの速い環境に対するアプローチという観点でも具体化されるように、適応によって複雑で困難な移行に対して対応するという考え方を提示しています。結論を先取りすれば、そのための心理的資源としてキャリア・アダプタビリティを提唱していると言えます。

機能主義者としてのスーパー

スーパーの理論には機能主義者としての考え方が源流として流れているとサビカス先生は述べています。これを予告として、次回は、スーパーが機能主義者としてキャリア理論を打ち立てた点について深掘りします。

なお、スーパーの理論については以前のnoteでも扱いましたのでご関心のある方は以下をご笑覧ください。


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