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【先行研究】"adapt"で四つも単語を使い分けるクセの強い論文!?:Savickas(2013)

キャリア・アダプタビリティについて尋ねられる機会があり、久々にサビカス先生の論文を読み返しました。サビカス先生は、adaptという単語はラテン語の原義に照らして”to fit"という意味合いであるとして、adaptivity、adaptability、adapting、adaptation、というように使い分けています。この四つの関連性について、ようやく分かってきた気がするのでまとめておきます。

Savickas, M. L. (2013). Career construction theory and practice. Career development and counseling- Putting theory and research to work, 2, 144-180.

冒頭の四つの"adapt"は、主体としての個人(self as agent)が、仕事・(ライフキャリアの)移行・トラウマといった外的な事象に対処するものとして、挙げられています。この四つについてサビカス先生は、adaptivity→adaptability→adapting→adaptation、という順番(sequence, p.157)で捉えています。

adaptivity (readiness)

adaptivityは、外的な事象に対して対処しようとする意欲や柔軟性といった特性を指します。

adaptivity denotes the personal characteristic of flexibility or willingness to meet career tasks, transitions, and traumas with fitting responses.
p.157

尚、ややこしいことに、本論文での四つの"adapt"単語を解説するはじめの箇所(p.157)では"adaptivity"という単語を使って以降も説明を続けながら、最後の方だけ唐突に"adaptiveness"(p.162)を使うという厄介なことをされています。文脈から判断して、サビカス先生は両者を同じものと私は解釈していますが間違っていたらゴメンナサイ。

こうした特性が直接的に適応行動や適応結果につながるのではなく、その間に介在する資源としてのadaptabilityがあります。

adaptability (resources)

これはシンプルにキャリア・アダプタビリティのことを指します。サビカス先生は、キャリア・アダプタビリティを最初に述べた1997年の論文から少しずつ定義を変えているのですが、本論文では以下のように定義しています。

Career adaptability denotes an individual’s psychosocial resources for coping with current and anticipated vocational development tasks, occupational transitions, and work traumas that, to some degree large or small, alter their social integration
p.157

キャリア・アダプタビリティは四つの下位次元から構成される概念で、それぞれ頭文字がCで始まるため4Cと呼ばれます。これまで何度も解説したのでここでは割愛し、以下にnoteのリンクを貼っておくので気になる方はご笑覧ください。

adapting (responses)

adaptingの説明をサビカス先生が行う際に、"willing"としてのadaptivityと"able"としてのadaptabilityを持っている個人がadaptingという行動を行うという関係性を述べています。ここまでの二つとの関連性を踏まえて意訳的に言えば、意欲能力に影響し、能力が行動を促す、ということなのでしょう。

adaptation (results)

resultという言葉をadaptationの説明として提示しながら、最後の説明の際にはスルッとgoalに置き換えて解説されています。

the goal is to harmonize inner needs with outer opportunities.
p.162

意欲が能力に、能力が行動を促すことで、私たち個人が抱くニーズと外界にある機会とを調和させる結果をもたらす、という関係性なのでしょう。

おまけ

四つの"adapt"関連単語を述べながら、それらの位置付けを表す別単語の全ての頭文字が"R"であることに今回読み直して気づきました。ここまで来ると、サビカス先生のすさまじいこだわりを感じます。

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