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【論文レビュー】組織からの支援を私たちはどのように認知するのか:佐藤(2014)

企業で働いていると、「あー、組織から支えてもらっているなぁ」と感じる時があります。こうした、私たちが認識している組織からの支援の感覚をPerceived Organizational Support(以下POS)と学問上では呼んでいます。本論文は、POSに関するレビュー論文で、何がPOSに影響し、POSが何に影響を与えるのかといった影響関係を明らかにしてくれている大変ありがたい論文です。

佐藤佑樹. (2014). 知覚された組織的支援 (Perceived Organizational Support) 研究の展望―理論的基礎, 先行変数, 結果変数および測定尺度について―. 経営行動科学, 27(1), 13-34.

定義と背景

まず、POSの定義から見ていきます。孫引きで恐縮ですが、著者によれば、POS研究では、以下のEisenberger & Stinglhamber (2011)の定義を引用することが一般的で、統一的な定義と言えるようです。

従業員の貢献を組織がどの程度評価しているのか、従業員のwell-beingに対して組織がどの程度配慮しているのかに関して、従業員が抱く全般的な信念:a general belief concerning the extent to which the organization values their contributions and cares about their well-being

p.15

POSは社会的交換理論を理論的基礎に置いた概念であるため、「個人と組織との間の関係性の質を表すだけでなく、関係性が構築されるプロセスを働く人々の視点から説明することが可能な概念」(p.14)と言えます。概念の背景にあるものや、定義を踏まえると、後述する影響関係についてもイメージを持ちやすくなるのではないでしょうか。

なお、社会的交換理論については、「日本の人事部」さんの概説がわかりやすいのでリンクを貼っておきます。内容をしっかり理解するためには本論文を読むことをお勧めしますが、ざっくりイメージを持ちたい場合は以下でも良いかと。

どのように測れるのか

POSの測定尺度もしっかりとしたものがあります。Eisenberger et al. (1986)の36項目の尺度でSurvey of Perceived Organizational Support(組織的支援検査)という名称で、SPOSと略されるものです。一次元構成でクロンバックのα係数も0.9以上という安定的なものですが、一次元で36項目も測るというのはなかなか高コストな尺度ですね。インターネット調査というものを経験してみると、項目数が諭吉さんの顔に見えてきて、あまり心地が良いものではありません。。

項目数への対応として、短縮版が後に開発されていて、信頼性と妥当性の検証については短縮版に関して実証研究が多く存在しているようです。短縮版については、別日に確認してみようと思います。

POSをめぐる影響関係

POSの先行変数は何で、結果変数は何なのか、という点を本論文では詳しく説明してくれています。詳細はぜひ読んでいただきたいのですが、見取り図として影響関係を示してくれているのが下図です。

p.27

「組織からの支援」という語感から抱くものは、企業全般というやや無機質的なものと、個人に近しい存在によるものとのグラデーションがあるように感じます。実際、先行変数として著者は遠因的と近因的という二つに区別していて、前者には人事制度などがあり、後者には上司からの支援といったものが挙げられています。相関関係があるという共通項はあるとしても、概念間に距離があるということがわかるのではないでしょうか。

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