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【集中連載】バウンダリーレス・キャリアとは何か!?(3):DeFillippi & Arthur(1994)

本論文では、組織にキャリア開発を依存する従来型の組織主体のキャリア管理状態におけるキャリア・コンピテンシーと、個人が主体的にキャリアをすすめるバウンダリーレス・キャリアにおけるキャリア・コンピテンシーとを対比的に論じています。バウンダリーレス・キャリアにおけるコンピテンシーの特徴が端的に現れていて興味深い論考と言えます。

DeFillippi, R. J., & Arthur, M. B. (1994). The boundaryless career- A competency‐based perspective. Journal of organizational behavior, 15(4), 307-324.

企業のコンピタンスと個人のキャリア・コンピテンシー

本論文では、企業単位のコンピタンスと個人単位でのキャリア・コンピテンシーとを対比的に捉えています。1990年前後に企業の経営戦略論の分野で流行したコアコンピタンス経営から、個人のキャリアを射程に置いたキャリア・コンピテンシーを考察するという流れは自然だったのかもしれません。

企業の競争優位性と関連するコンピタンスである組織文化、ノウハウ、ネットワークという三つの観点から、個人のキャリア・コンピテンシーを紐付け、両者をつなげて人材開発およびキャリア開発というマネジメント施策に落とし込んだものが以下の表になります。

DeFillippi & Arthur(1994)p.310

組織に囚われたコンピテンシー vs. 囚われないコンピテンシー

著者たちは、個人単位でのキャリア・コンピテンシーは、組織に囚われた状態で求められるものと、組織に囚われず境界のない状態で求められるものとでは異なると指摘し、以下の表のようにまとめています。

DeFillippi & Arthur(1994)p.317

まあそりゃあそうかなぁと思いながらも、興味深いのはネットワークの三番目の対比として挙げられている所定(Prescribed)vs.出現(Emergent)です。

静態的なビジネス環境であれば、組織によってキャリア管理されている状態において、組織で重視されている特定のポジションとのネットワークを構築していることが合理的だったと言えます。他方、環境変化が激しく個人主体でキャリアをすすめる状態においては、本人のためになり他者との相互作用が起きるネットワークを予見することは現実的ではなく、出現的なネットワークになるという指摘は納得感があるのではないでしょうか。

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