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【論文レビュー】出向・転籍がワークするためには何が必要か?:島貫(2010)

グループに複数の企業がある状況では、出向・転籍といった企業間異動が行われます。では、こうした出向・転籍といった異動人事における労働者の満足を高めるにはどのようにすればよいのでしょうか?

島貫智行. (2010). 企業間異動と情報── 出向・転籍者の満足度の規定要因──. 組織科学, 44(2), 88-101.

分析枠組み

本調査では751名のデータを基に分析を行っています。仮説としては、異動元による異動先の情報を提供することが労働者の満足を高めること(仮説1-a)、労働者本人の希望が企業間異動(出向・転籍)の満足度を高めること(仮説1-b)、異動先と異動元企業の関係性が良好であることが労働者の満足度を高めることに影響すること(仮説2-a)、異動元による異動先企業への交渉力があることが労働者の異動の満足度を高めることに影響すること(仮説2-b)の四つが設定されています。著者は以下のようにまとめてくださっています。

p.93

結果分析

結論的には上記四つの仮説は検証されたと結論づけておられます。出向や転籍といった企業を超える異動は、過去においてはグループ内における本社の人材の活躍場所を確保するために、本社以外のグループ企業へ人材を送り出すという機能が多かったという先行研究があります。実務的にもその通りだったと感じます。

しかし、企業間での異動がビジネスを進める上での必要性が増してきた現代においては、こうした企業間の異動において労働者の満足度を高め、そこに異動元と異動先といった企業間の関係性についてもケアすることの重要性を指摘している本論文は興味深いです。

出向・転籍する労働者の満足度の向上

四つの仮説が検証されたのちに、異動者の満足度が高まるステップと関係性を以下のようにまとめています。

p.98

こうしたステップと観点を意識しながら、出向・転籍という企業間をまたがる異動人事に臨みたいものです。

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