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【読書メモ】昇進と仕事におけるキャリアの停滞:『働く人のキャリアの停滞』(山本寛編著、第1章・山本寛著)

社会人の方であれば、「なんかキャリアが停滞しているな」とふと感じる瞬間があるのではないでしょうか。こうしたキャリアの停滞感はキャリアプラトーと呼ばれます。これは、昇進機会が見えずに滞留することから生じる①階層プラトー現象と、仕事のそのものから生じる②内容プラトー現象とに分けられます。

なんとなく停滞感があるなぁと悩むのではなく、どちらが自分にとって切実な問題であるかを理解することは、打開するための鍵になります。自覚的になるためにも両者の特徴を捉えておくことは有効でしょう。

①階層プラトー現象

階層プラトー現象は、いわゆる年功序列の運用をしている日本企業では1990年代からの積年の課題です。端的に言えば、管理職の滞留によるポスト不足です。役職定年制度を導入しても大きく変わらず、労働人口の減少が始まる2007年を経過しても実感値としては変化がなかったのではないでしょうか。

ただ、全ての社会人が階層プラトーを感じるわけではありません。外的キャリアを進めること(いわゆる出世)に動機付けられる社員のみが感じるものです。本章では、階層プラトー現象を感じる社員が内容プラトー現象を感じる社員よりも多いとしていますが、ミレニアル世代をはじめ必ずしもそうではないのではないかと個人的には感じます。

②内容プラトー現象

こちらは職務の内容に対して停滞感を感じるものです。ジョブ・デザインの考え方を援用すれば、職務拡大(例:職域を広げるようなアサインメントを行う)を図るか、職務充実(例:企画や意思決定にまで関与してもらう)を図るか、ということが解決策の緒になります。

但し、同じ仕事を担当する期間が長ければ自動的にプラトー化しやすくなるというわけではないことに留意が必要です。特に昨今の専門職やプロフェッショナル制度と絡めて言えば、専門性を探究するキャリアを志向するメンバーには、日本企業式のジョブ・ローテーションによる職務拡大は機能しないかもしれません。

まとめ

さらには、①と②が同時に訪れるダブルプラトーということも人には訪れうるという悍ましい指摘が本章ではなされています。ではどのように対応すれば良いのでしょうか。

①②でも述べてきた通り、一人ひとりの社員に向き合って、その状態性や志向性を細かく把握することが必要です。つまり、十把一絡げに対応する従来の公平的な人事制度の運用ではなく、一人ひとりの個性に対応する個性型人事が求められると言えるのではないでしょうか。


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