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【読書メモ】スター社員はどのようなプロセスで生み出されるのか?:『Wedge』2023年2月号

『Wedge』の最新号に掲載されている服部先生のスター社員に関する記事が面白いです。スター社員とは「例外的に高い成果をあげ、かつ広く内外労働市場においてその存在が知れ渡っている個人」(28頁)のことを指します。サクセッション・プランニングや高度専門人材のリテンションに関心がある人事パーソンに一読をオススメします。一般向けの雑誌なので平易に書かれながらも、ポイントが凝縮されています。

スター社員が生まれる背景

スター社員とは、自組織内外の社会によって生み出される存在です。一部のベンチャー創業者を除けば、社会人生活を始めた直後から「私はスター社員です」という方はいないと基本的には言えるでしょう。

では、どのようにスター社員は生み出されるのでしょうか。著者によれば①複数の顕著な成果②成果の増幅という二つの要因が掛け合わされることで説明可能だそうです。

①複数の顕著な成果

一つ目の要因について、著者は以下のように端的に示しています。

複数の顕著な成果 =
適切な経験 ✖️ 経験から学ぶ力 + 学習の支援
29頁

まず大事なのは適切な経験です。CCLの「7(経験):2(薫陶):1(教育)」でも強調されているように、職務アサインメントによって良質な経験をデザインすることはスター社員にとっても必要な要素と言えそうです。

二つ目の経験から学ぶ力は、人事パーソンにとってはコーン・フェリーのLearning Agility(学習俊敏性)を思い浮かべれば良いのではないでしょうか。学術的に理解したい方は経験学習ですね。

三つ目の学習の支援は「プラス」で繋がっていますので促進要因と考えれば良いのでしょう。組織によって個人の学習を加速化することで、顕著な成果を積み上げることを促すようです。

②成果の増幅

人材輩出企業と呼ばれてスター社員を生み出し惹きつける企業と、人材「排出」企業と呼ばれてスター社員が生まれないorすぐ逃げ出してしまう企業とがあります。両者の間には、二つ目の要因である成果の増幅については以下のように表せるようです。

成果の増幅 =
成果の発見 ✖️ 成果の流布 ✖️ リソースの配分 ✖️ 脱線へのフォロー
29頁

成果の発見では、組織として意図的に現場での成果を見出す作用が重視されています。現場マネジャーに一任するのではなく、多様な人によってその組織における優秀な成果を埋もれさせないしくみを設けることが大事と言えます。

発見した成果のインパクトを企業の中で広めていくことが成果の流布です。事業構造が複雑し、変化が激しい時代においては、類まれな成果について組織の中で喧伝し、そのような成果を生み出した人材にスポットを当てるしくみが必要です。

こうした人材が継続的に成果を生み出し続けられるように、適切なリソースの配分もまた必要です。他方で、リソースを配分されることによって、その個人が傲慢になってしまったり過去の成功体験に囚われてしまって変化対応できなくなる、といった脱線のリスクも生じます。リソースの配分とともに脱線へのフォローにもケアする重要性を著者が強調している点に着目するべきでしょう。

雑記

新幹線に乗っていると、「時代の先端を行く雑誌『Wedge』を…」というフレーズが耳に入ってきます。ここまで大きく出られてしまうと、『Wedge』を買うのを憚られてしまう私は小心者なのでしょう。というわけで、本号はAmazonで買ってます。車内でパーサーの方に「時代の先端を行く雑誌をください」とは言えませんし、グリーン車に乗れる身分でもありませんので。


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