【論文レビュー】フィリピンでのキャリア・アダプタビリティ尺度研究:Tolentino et al. (2013)
Savickas & Porfeli(2012)の国際版の尺度開発に関わっていない国として、フィリピンでもキャリア・アダプタビリティ尺度の検証が行われています。
フィリピンの特徴
著者たちは、フィリピンでの職場の特徴について、先進国の職場では高い年齢の社員が働く環境になりつつあるのに対してフィリピンでは若い社員が多く経済発展が続いているとしています。また、個人は家族との繋がりを大事にし、自身の環境が経済的に発展することを希望する傾向が強いとしています。こうした特徴があることからフィリピンにおけるキャリア・アダプタビリティの傾向を把握するために尺度翻訳を行ったとしています。
調査概要
フィリピンでは英語が日常的に使われるため、Savickas & Porfeli (2012)のCAAS version 2.0の24設問をそのまま英語で使っています。ただ、中間スコアになることをなるべく防ぐという目的のため、オリジナルの5件法ではなく7件法で測定しています。
記述統計
調査対象は、289名の学生を対象とした調査(平均18.64歳)と495名の社会人を対象とした調査(平均31.71歳)との2つに分けて実施しています。
学生対象
社会人対象
学生対象の記述統計では一部に天井効果があやしい設問が含まれる一方で、社会人対象のものでは天井効果・床効果は特に問題がないようです。ただ、いずれもスコアは高い傾向にあると言えます。
妥当性の検証
本論文では、収束的妥当性の検証を行っています。学生を対象としたものではキャリア・アダプタビリティに影響を与える要因について、社会人を対象としたものではそれに加えてキャリア・アダプタビリティが影響を与える帰結についても見ています。
それぞれキャリア・アダプタビリティ全体と4つの下位尺度との相関をみていて収束的妥当性が検証されたとしています。
モデル適合度
確認的因子分析を行った結果、モデル適合度については、学生を対象としたものがRMSEA=0.074でSRMR=0.047、社会人対象のものがRMSEA=0.072でSRMR=0.044と、いずれもRMSEAがやや高くて範囲ギリギリという状況です。とはいえ範囲に収まっているので適合度も問題ないと判断されています。
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