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【読書メモ】コロナ禍で組織社会化はどのように変わったのか?:『これからのキャリア開発と組織社会化』(E. H. シャイン・尾川丈一 ・パーソル総合研究所著)

本書の第二章は、シャインによる組織社会化の講義と質疑応答に関する内容です。このセッションは2020年11月に四日間で行われています。そのため、コロナ禍を経ての組織社会化の変化について、質疑でも深めて論じています。

コロナ禍による仕事の進め方の変化は日本だけのものではありません。組織社会化は、物理的に同じ組織にいることで促される要素も多く、オンラインで業務を進めることが日常の風景になったコロナ禍ではあり方の変化が増進しています。

現代における新入社員の組織社会化についての捉え方と、新入社員教育に関しての質問が出た際に、シャインは以下の二つを提案しています。

①上司やメンターの再教育

質問への回答の箇所で、新入社員や若手社員の持っているニーズや野心を理解していない上司やメンターがいることの問題をシャインは強調していました。具体的には、EGOからECOへといった意識の変化を挙げていて、新入社員のニーズを謙虚に理解するための教育を上司やメンターに対して行う必要性を挙げています。

②逆機能への注意喚起

組織社会化を促すために組織が新入社員に対して関与することは重要です。他方で、日本企業の特性を踏まえた上で、シャインは組織社会化施策の逆機能の問題に留意することに言及しています。

つまり、「仕事を学ぶ」「組織を学ぶ」といった受動的な側面を強調しすぎてしまうと、新入社員は上司やメンターから言われることを受身的に待ち、上司に対して意見や主張できない企業文化が生じてしまうことを懸念しているのです。忖度文化などと揶揄される日本の組織を理解したシャインならではの警句として、よく意識しておきたい点と言えるのではないでしょうか。


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