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【徹底解説】キャリア・アダプタビリティの起源(5)'planfulness'という造語:Savickas(1997)

キャリア・アダプタビリティという概念を提示する上で、サビカス先生は将来志向計画性といったものを重視していたようです。そこでスーパーを引き継いで用いた言葉が'planfulness'です。決して長くないこの論文の中で一節を割いて解説しているので、サビカス先生がいかに重視していたかがわかるような気がします。

Savickas, M. L. (1997). Career adaptability- An integrative construct for life‐span, life‐space theory. The career development quarterly, 45(3), 247-259.

planfulness=スーパーの造語

この'planfulness'という言葉、聞いたことがないなと思ったらスーパーの造語のようです。

He conceptualized planfulness (despite its not being a word recognized by any dictionary) as the prime component in career choice readiness.
(ざっくり和訳)
彼(Super:引用者補足)は、planfulnessという言葉を(どの辞書にも載っていないにもかかわらず)キャリア選択の準備における主要な要素として概念化した。

p.255

辞書に載ってないよね、という軽妙な表現をされるのがサビカス先生流と言えます。他の論文や書籍でもたとえ話がふんだんに用いられていて、面白みを感じられます(好き嫌いはあるかもですが)。

将来志向と計画的態度

ここからサビカス先生は、'planfulness'という概念をキャリア・アダプタビリティにおける意味合いとして解説をしています。

Future orientation and planning attitudes, which sustain career choice readiness and adaptability, are equally important in preparing for success and satisfaction in all life roles.
(ざっくり和訳)
キャリア選択準備と適応を維持する将来志向と計画的態度は、人生のあらゆる役割における成功と満足を準備する上で等しく重要である。

p.255

将来志向(future orientation)計画的態度(planning attitude)といった言葉に言い換えて説明を試みていますね。このnoteの執筆時点(2024年)では、Savickas & Porfeli(2012)のキャリア・アダプタビリティの尺度開発で関心、統制、好奇心、自信という四つの下位次元構成であることが明らかになっています。

現時点から巻き戻して考えれば、将来志向とは関心や好奇心と関係し、計画的態度は統制や自信と関連するものであるとも推察されます。この辺りの言葉の使い分けをサビカス先生が、1997年以降の論文でどのように推移しているのかも今後もう少し見ていきたいなと思いました。

後天的な開発可能性

planfulnessや計画的態度といったキャリア・アダプタビリティと関連するとサビカス先生が位置付けているものは、後天的に学習可能だとしています。

Planful attitudes can be learned, thereby allowing individuals an important means of increasing their adaptability.
(ざっくり和訳)
計画的態度は後天的に学習可能であり、それによって個人が適応性を高めることができる。

p.256

特性のように生まれ持ったもの、あるいは人生の早い時期に固定的になるというものではないということですね。サビカス先生はキャリア・アダプタビリティを心理社会的資源というように「資源」として捉えているので、この論文の時点で学習可能であるという位置付けを明示していることは重要な指摘とも言えるでしょう。

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