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【読書メモ】特定の意味を有するシンボルの行動主義的説明:『G・H・ミード著作集成』(植木豊編訳)第1篇・第1章

G・H・ミードは、プラグマティズムの影響を受け、後にシンボリック相互作用論と呼ばれる領域の源流を為す開拓者として知られています。ただ、編訳者によれば、こうしたラベリングに留まらない可能性と魅力とがミードの論文にはあるため、この編訳書を編んだそうです。

ミードを読むことは、現代における社会学の骨太な背景を理解することに繋がります。また、シンボリック相互作用論はグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)の源流となる理論であり、質的研究のアプローチを理解するためにも重要でしょう。

私の理解が追いつく限り各章ごとにごとに所感を記していきます。第1篇・第1章は、一言で言えば、シンボリック相互作用論の源流とも言える論文と言えそうです。

ミードといえば自我ですが、IとMeの考え方が提示されます。自我は、個人の内面に先見的に内在しているのではなく、「個人が、経験の中で、自身にとっての社会的対象になるとき」(14頁)に生じるとしています。つまり、個人と社会との相互作用があるときに自我という考え方が成り立つということです。

自我を持った近代的人間の行動は、それ自体には意味がないとミードは捉え、特定の対象が反応を示すことで初めて意味が生じるとしています。シンボリック相互作用論に引きつけて考えれば、身振りをはじめとしたシンボルが意味を持つためには創作者や発信者の行動だけでは不十分です。

シンボルを発信する人が「自分が自分自身であると同時に相手側の他者になりうる能力を通じて」(16頁)、発信者と受信者の相互作用によってシンボルは意味を持つようになります。

[何かを指し示す特定の]意味というのは、事物のうちに、しかも、諸々の個人との関係下にある事物のうちにある。外部から切り離された個人内部の心的過程内にあるのではない。(19頁)

個人と他者・社会、内と外との相互作用について、ミードは探究しているようです。詳細は、これ以降の章で深まっているのでしょう(きっと)。


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