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【論文レビュー】個人の視点から見た組織と個人の関係性とは?:大橋(2019)

本論文では、組織と個人との関係性(Employee-Organization Relationship:EOR)について、個人の視点から組織との関係性を捉える概念についてレビューを行っています。具体的には、組織コミットメント、個人ー組織適合(Person-Organization Fit:POF)、心理的契約、組織アイデンティフィケーション(ディスアイデンティフィケーション)、I-dealsです。

大橋重子. (2019). 個人と組織の関係性に関する既存概念の再検討. 横浜国際社会科学研究, 23(3).

個人と組織の関係性と個人観のマトリクス

冒頭で述べたそれぞれの概念について、能動的vs.受動的安定vs.変化の2軸のマトリクスで表してくださっているのが以下のものです。

p.53

こういうまとめがありがたいんですよねー。後から学ぶ身として感謝しかありません。

受動的な個人像

ざっくりとした言い方になりますが、従来のEORの概念は、個人を組織に対して受動的に捉えているものだったと言えます。図1でも下の象限に出てきています。

加えて、組織と個人との関係性を安定的に捉えるものが多く、たとえば組織アイデンティフィケーションについては以下のようにまとめられています。

組織アイデンティフィケーションでは、組織と自分をオーバーラップさせることで、組織との一体感を求める個人像に基づいて組織と個人の関係性が描かれている。そこでの個人は、自分のアイデンティティを証明するための標識として組織を捉え、同一化という形で組織との関係性を認知することで自分の存在意義を表現している。

p.46-47

受動的から能動的へ

古典的なEOR研究では組織に対して受動的な個人を想定する傾向がありましたが、個人の能動性に着目した概念がその後に登場してきています。本論文で言えばI-dealsディスアイデンティフィケーションです。

日本の雇用社会においても、組織と個人の関係性が変わりつつあると言われています。個人側から見た主体的な組織への捉え直しに着目したこれらの概念についても今後は注目する必要があると言えそうですね。

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