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【論文レビュー】人事施策の効果性は業種によって異なる!?:Terpstra & Rozell(1993)

先日、ある研究会で文献発表した以下の英語論文についてまとめてみます。本論文ではいくつかのリサーチクエスチョンを設定していて、中でも興味深かったのは、人材配置施策(Staffing Practices)の組織業績への効果性は業種によって異なるのか?という問いです。結論を先取りすれば、業種ごとに効果はけっこう異なるよ、と著者たちはしています。

Terpstra, D. E., & Rozell, E. J. (1993). The relationship of staffing practices to organizational level measures of performance. Personnel psychology, 46(1), 27-48.

人材配置施策の業績への影響は業種間で異なる

まず前提として、本論文では人材配置施策が組織業績にポジティヴな影響を与えることを実証しています。その上での業種ごとの分析であることをご理解ください。

サンプルサイズの制約上、比較している業種は、製造業、サービス業、卸売・小売業、金融業の四つです。これらの業種において、五つの人材配置施策の実施と組織業績との関連性を分析した結果が下表です。

Terpstra & Rozell(1993)p.40

端的に言えば、三つのことが見て取れます。第一に、サービス業では、五つの人材配置施策が、全体的な業績指標とともに個別業績指標の多くについて影響を与えているということが言えます。これは、労働集約度の高い環境であるサービス業では人的資源への依存度が高く、人材配置施策が人的資源に与える影響度が組織業績にも反映されやすいからなのでしょう。

第二に、卸売業・小売業と金融業では、人材配置施策が個別業績指標のうちの一つである年間利益に影響していることが推察されるものの強い関係ではありません。

第三に、製造業では、人材配置施策はいずれの組織業績に影響していることは見られませんでした。この理由について著者たちは、製造業では、人材は数ある重要なインプットの一つに過ぎないため、質の高い人材を確保するための効果的な人材配置が、組織レベルの成果に与える影響が、他の業種に比べて相対的に小さくなる可能性があると捉えています。

繰り返しになりますが、人材配置施策の組織業績への有効性は全般的には言えますよ、という結論の上での業種ごとの詳細な差異の比較・分析であることをご承知おきください。適切な人材配置施策を実行することは、組織業績にインパクトを与えるというライン管理職や人事パーソンにとって勇気の出る論文の紹介でした。

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