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【読書メモ】組織コミットメントは態度or行動!?:高木浩人著『組織の心理的側面 組織コミットメントの探求』(3/8)

第2章では組織コミットメントをどのように捉えるかがテーマでした。第3章では、組織コミットメントが個人の態度で形成されるのか、あるいは行動によって形成されるのか、という二つのアプローチが対比的に論じられます。

態度 vs. 行動の背景

態度的コミットメントと行動的コミットメントの二つの概念の相違は、そのコミットメント研究がどの研究領域から出てきているのかを反映していると著者はしています。

組織行動の研究者たちは、コミットメントを労働者が組織の目標や価値を内在化していく過程を記述するものととらえ、社会心理学者たちは、それを個人の過去の行動がその個人を組織に拘束していく過程を記述するものとしてとらえたとされる。前者が態度的コミットメントと呼ばれ、後者が行動的コミットメントと呼ばれる。(64頁)

研究領域によってものの見方に傾向性が現れるというのは興味深いなと感じます。組織行動論の研究者が離職という企業組織における事象に着目するために態度に着目する一方、社会心理学者は個人の行動とその背景にある心理に着目するという傾向があるようです。

態度的コミットメント

態度的コミットメントと呼ばれるものは、第2章で言うところの情緒的コミットメントが該当すると解説されています。

つまり、組織に対して愛着を感じるかどうかという態度によって、組織コミットメントは形成されます。この形成が機能しない場合や減衰してしまうと離職に繋がるということです。

行動的コミットメント

他方の行動的コミットメントは、第2章の功利的コミットメントの流れを汲むものと言えるようです。

組織に対していろいろな意味での投資行動を繰り返すことによって、離れることと残ることとを比較衡量し、組織に残ることが合理的であると考える限りにおいてコミットするということです。

態度と行動の相互作用

態度的コミットメントと行動的コミットメントは、ここまで述べたように概念の背景には研究領域の違いがあります。しかしながら、二つの概念は必ずしも対立するものではなく、相互作用する関係性もあるのではないか、と言われています。(だからこそ、組織コミットメントの三次元のうちの二つが情緒的と功利的(継続的)なのです)

具体的には、行動的コミットメントしている組織に対してもし態度的コミットメントしないとなると、人は違和感をおぼえます。これは、認知的不協和の理論を適用するとよくわかるでしょう。

たとえば離職に対しては両者ともに影響を与えながらも、詳細に関する差異は依然として残ります。したがって、行動してもらえば態度的コミットメントも高まると企業が安易に捉えることは危険であると著者は警鐘を鳴らしていることに留意は必要でしょう。


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