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【論文レビュー】マカオでのキャリア・アダプタビリティ尺度研究:Tien et al. (2014)

マカオでもキャリア・アダプタビリティの国際版の尺度の実証研究が行われています。マカオといえばカジノがあるという程度の理解しかなかったのですが、この後で述べる文化的背景を見ていると実証研究の意義がよくわかりました。

Tien, H. L. S., Lin, S. H., Hsieh, P. J., & Jin, S. R. (2014). The career adapt-abilities scale in Macau: Psychometric characteristics and construct validity. Journal of Vocational Behavior, 84(3), 259-265.

マカオで調査する意義

本論文では、マカオはもともと、中国とポルトガルの文化が混ざったユニークな状態であるとしています。ただ、2003年のカジノ設立以来、急激な経済発展を遂げてマカオ内での雇用率が高くなった一方で、マカオの人々は激変する環境に必ずしも適応することが難しい方もいて、特に若年者は開かれた労働市場に対応することに不安を抱いているようです。そのために、環境変化やトランジションへの適応を見ているキャリア・アダプタビリティを実証研究したと著者たちはしています。

記述統計

マカオでの調査対象は二つのグループに分かれています。一つ目のグループは日本の学齢期に合わせると中学生相当の対象層の270名で平均年齢は14.57歳、もう一つのグループは高校生相当の188名で平均年齢は17.88歳となっています。

中学生の場合

一つの設問だけ天井効果がどうなのだろー、と思うものはあるものの、他の中華圏でのスコアのように高すぎず、安定的な印象です。このあたりはマカオで調査する意義とも関連していそうです。

p.261

4下位尺度・24設問での確認的因子分析を行った結果、モデル適合度としてはRMSEA=0.072、SRMR=0.051というようにやや高いスコアではあるものの許容範囲と言えそうです。

高校生の場合

中学生の場合と同様、全く同じ一つの設問で天井効果が厳しいものの、全般的には他の中華圏の国・地域より安定的です。

p.262

こちらも4下位尺度・24設問での確認的因子分析の結果、RMSEA=0.073、SRMR=0.060とやや高めの値ではあるものの許容範囲と言えそうです。

年齢差はあるが性差はない

中学生と高校生とを対象とした二つの調査結果に基づき、著者たちは、中学生と高校生の相違と、男性と女性での相違という二つの差異を検討しています。

p.264

多変量解析の手法の一つであるtwo-way MANOVA(two-way Multivariate Analysis of Variance)で二つの差異を検討しています。その結果として、中学生と高校生とでは有意な差がある一方、男性と女性とでは差は見られなかったと結論づけています。

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