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【論文レビュー】幸福感とライフキャリアの関連について:労働政策研究・研修機構(2021)

人が幸せを感じることと、ライフキャリアとはどのような関係があるのでしょうか?本論文では、さまざまな変数を用いて両者の関係性を具に分析してくれていて、ライフキャリアについて考察する上で一読の価値がある内容です。

労働政策研究・研修機構(2021). 就業者のライフキャリア意識調査―仕事、学習、生活に対する意識. 調査シリーズ. No. 208.

男性より女性の方が幸福度が高いが。。。

まず、日本人の男性と女性とを比較した場合、幸福度人生満足度も女性が有意に高いという結果が出ています。まあ、そんなもんかなぁという気もします。(下表の行では人生「充実」度となっていますが誤植と思われます)

p.165

しかし、両者の違いは若いうちに大きく、50歳代になるとほぼ同じになるという傾向があるのが興味深い点です。

p.166
p.166

これ、直感的にはなんでだろう?と思うものですが、著者たちは他の変数での傾向との関連から以下のように推測しています。まず、男性が徐々に幸福度と人生満足度が上昇傾向にあるのは、男性の場合には年収が歳を重ねるに伴って増加しているため(女性は平均的には上昇傾向は見られません)、年収増加によって上昇傾向にあると結論づけています。

次に女性が減少傾向にあるのは、組織コミットメントが年齢とともに低下することと関連しているのではないか、と本論文ではされています。こちらは、個人的な直感とは少々異なりますが、データを元にそのように結論づけている点は理解したいと思います。

年収800万円以上の幸福度は同じなのか!?

年収については、俗に、年収800万円以上の場合には幸福度は上昇しないという説があります。本論文によれば、これの元ネタはKahneman & Deaton(2010)による幸福度と年収の調査だそうで、年収7万5,000ドル以上では幸福感が横ばいになるとされています。

日本では、当時の為替レートから年収800万円説が言われるようになったわけですが、本論文では、横ばい傾向になることは同様に認められるものの、上昇がなくなる年収は600-700万円であるとしています。

p.168

キャリアの見通しと幸福感

もう一つ、なるほどなーと唸ったのが職業生活の見通しと幸福感に関する分析結果です。

p.182

見通しはある程度はあることが望ましいものの、度を超えると逆効果になるという結果になっています。これは、不安の軽減という観点で見通し感がポジティヴに効くものの、あまり見えすぎるとよくないということです。こちらは言われてみれば納得できるロジックのように感じます。

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