【論文レビュー】エンプロイヤビリティはどのように測れるのか?:Heijde & Van Der Heijden(2006)
エンプロイヤビリティを測定するためには、五つの次元で上司評価と本人評価を組み合わせればできますよ!と本論文では提示しています。
エンプロイヤビリティを測定する五次元
本論文ではエンプロイヤビリティを能力ベースでのものと捉えています。その上で、以下の五つの次元(p.453)で測定可能であると結論づけています。
occupational expertise
anticipation and optimization
personal flexibility
corporate sence
balance
1. occupational expertise/職業的専門性
著者たちは職業を遂行する上での専門性がエンプロイヤビリティを構成する最初の要素であるとしています。質問項目は15個と他の四つと比べて最も多いものです。例えば以下のような質問です。
どこでも雇用されるという感覚を得るためには専門性は大事な要素のようで、日本企業でも最近になって言われてきていることと符合しているように思えます。
2. anticipation and optimization/期待・楽観性
和訳の語感とは少し印象がズレるかもしれませんが、自分自身が今後のキャリアを構築していけるという効力感に近いものです。質問項目を一つだけ抜粋してみます。
市場価値というなかなか現実的なドギツイものを選びましたが、将来に向けて自分自身のキャリアをすすめられ、それが市場からも評価される、という感覚ですね。
3. personal flexibility/柔軟性
市場一般や新しい環境への柔軟性という意味合いでもあるのですが、現在の業務や職場への適応性みたいなものも含んでいるのが面白い次元です。
現在のことはさておいて、新しい機会にだけ柔軟であるというのでもよくない、ということのようです。
4. corporate sence/企業感覚
これ、むちゃくちゃ面白いんですよね。転職を多くしていると、また中途入社者の採用面接をしていると、この感覚ってたしかに大事なんだろうなと思います。
上のような質問項目で測定するのですが、「1.職業的専門性」だけではダメで企業感覚も大事だよということを測定しようとしているのではないかと思います。
5. balance/バランス
これも面白いのですよね。ワーク・ライフ・バランス(インテグレーション)系の次元でして、中長期的にキャリアをすすめるには、仕事とか専門性とかだけではこと足りないということを言っているようです。
五つの次元の中の一つに孔子た次元があると、それこそバランスの取れた尺度だなぁと感じます。
実践的示唆
では、企業でどのように活用できるのでしょうか?著者たちが実践的示唆で述べているのは、業績評価を年次の面談で行う際に能力開発の一環として測定してモニターすると本人の成長につながるのではないかとしています。
併せて、個人単位だけではなく部門単位でのスコアを人事がモニターしていけば、部門ごとの課題感を把握でき、施策の効果性を検証することができるとしています。本人評価だけではなく上司評価も行える尺度なので、実行してみると面白いかもしれません。
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