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【論文レビュー】異動前後がまったく異なる職務の異動をどう考えるか?:笠井(2011)

従来の日本企業では、定期的なジョブ・ローテーションにより補完性の高い職務への異動人事を行うことで知的熟練を促し、同じ企業の中でキャリアの幅を広げることが求められてきました。本論文では、異動前後でまったく異なる職務を担うことになる異動が現在は生じることに着目し、その背景と対応について検討しています。

笠井恵美. (2011). まったく異なる職務への異動が企業における熟達を促す可能性の検討. 研究紀要 Works Review, 6(5), 1-12.

非連続な異動が生じる背景

ジョブ・ローテーションにより社員の知的熟練を促す異動の運用は、事業構造の変動が中庸なレベルの場合には適していたと言われます。将来のビジネスの予見性が高く、終身雇用型で雇用の流動性が低い環境下においては有効であったしくみといえます。

他方、現在では企業が事業構造を大きく変動させるケースが増えてきました。こうした状況では、事業の買収・売却に伴って全く異なる職務への異動が生じることも多くなり、再構造化を伴う熟達の重要性が高まり、これらによって非連続な異動が多くなったと考えられます。

まったく異なる異動の際に重要なこと

本論文では、大きな職務の変更を伴う異動を経験した社員に対するヒアリングを通じて、こうしたケースにおいて求められることを仮説的に提示しています。再構造化のプロセスにおいて重要なことは、異動前部署の上司による説明、本人自身の強い問題意識、異動前後の差異の理解、新しい職務に求められる内容の一方的なかなりのインプット、周囲への働きかけと反応、仕事が回っている手応え感の獲得、行動への意欲、が挙げられました。

これらのプロセスを進める最初のきっかけは、異動前部署の上司による説明と考えられます。いかにして、本人を動機づけるために異動前の上司が説明を行うかが重要なのはイメージしやすいのではないでしょうか。

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