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【論文レビュー】組織と個人の良い距離感とは??:高尾(2012)

組織で働く私たちは、自分自身と組織との関係性をどのように認識しているのでしょうか。組織アイデンティフィケーションは、組織に対する個人の認識を表す概念で、興味深い考察をもたらしてくれる存在です。

高尾義明. (2012). 組織成員のアイデンティフィケーション. 組織学会大会論文集, 1(2), 78-84.

組織アイデンティフィケーションの意義

企業で働く身としては、似たような概念が多いとめんどくさいなと思うことがあります(研究界隈のみなさま、ゴメンナサイ)。本論文で扱われている組織アイデンティフィケーション組織コミットメントも近しい概念でして、以前は分ける必要性はどこまであるのだろうか?と思っていました(重ね重ねスミマセン)。

ただ、組織アイデンティフィケーションと組織コミットメントとは分けて考えると見える組織の課題があります。では、両者はどのように異なるのでしょうか。

組織コミットメントとの相違

高尾先生は、組織コミットメントと組織アイデンティフィケーションの弁別性に言及しているPratt(1998)を引用しながら、両者の相違について以下のように述べておられます。

組織コミットメント論は、「私はこの組織にいてどのくらい幸せであり、満足しているか」(p.79)という問いに関わるものだそうです。つまり、個人にとって組織は別個のものであり、情緒や規範や功利的な側面からそこにい続けようとする意思のようなものと考えられます。

それに対して組織アイデンティフィケーションは「この組織との関係から自分自身のことをどのように知覚しているか」(p.79)を問うものだとしています。そのため、組織と個人との一体感をどのように認知しているかというものであり、個人の多様な社会的な自己概念(自分とは何者か)に関わるものです。

組織と個人の良い距離感!?

組織との一体感を表す概念が組織アイデンティフィケーションであるのに対して、組織と切り分けた個人という認識を表す概念としてディスアイデンティフィケーションがあることも紹介されています。

さらに、アイデンティフィケーションの高低とディスアイデンティフィケーションの高低とを掛け合わせて、どちらとも高い状態をアンビバレント・アイデンティフィケーションと呼ばれることにも言及されています。似たような言葉や概念がここまで出てくると通常は混乱するのですが、個人的にはとても重要な相違があるように感じます。というのも、アンビバレント・アイデンティフィケーションは、組織と個人の良い距離感を表すものと言えるように思えるのです。

本論文を基に大幅に加筆された内容は、『組織論レビュー1』の第5章に詳しいので深く理解されたい方はご覧になってみてください。

おまけ

概念に対して好き嫌いを持つのは良くないのかもしれませんが、個人的には好きだなぁと思うものがあります。本論文の中ではアンビバレント・アイデンティフィケーションは好きな感じがします。「どんだけカタカナ使ってるんだ!」というツッコミはもちろんありつつ、言葉としてアンビバレント(両面感情)が好きなんです(笑)。

学部の時に、花田先生の授業よりも好きだった(?)小熊先生の歴史社会学の講義でアンビバレントという言葉を初めて聞いてなぜか耳に残りました。私自身が極めて単純な頭の構造の人間なので、複雑な感情を持つ状態性に興味があるのかもしれません。

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