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【論文レビュー】チャレンジ・ストレッサーとレジリエンス。:池田ほか(2022)

タフな職務をアサインすれば人は成長するのでしょうか。自分自身がそうした経験によって成長したと実感したマネジャーは、良かれと思ってメンバーに対してチャレンジ経験を与えようとします。その対象となるメンバーが若手社員であれば、「若いうちの苦労は買ってでも。。。」的な価値観から、なおさらそのような傾向があるかもしれません。

本研究では、チャレンジや充実感などを生み出すストレッサーであるチャレンジ・ストレッサーと、社内政治や役割曖昧性などによる目標達成を妨げるストレッサーであるヒンドランス・ストレッサーとが、若手社員の業務能力向上と情緒的消耗感にどのような影響を与えるのかを明らかにしています。結論から言えば、両者を部分的に媒介する概念としてレジリエンスを提示したモデルを基に、若手社員を対象とした調査によって実証しています。

池田めぐみ, 田中聡, 池尻良平, 城戸楓, 鈴木智之, 土屋裕介, 今井良, & 山内祐平. (2022). チャレンジストレッサーとヒンドランスストレッサーが若年労働者の業務能力向上と情緒的消耗感に与える影響:レジリエンスの媒介効果に着目して. 経営行動科学, 33(3), 143-156.

チャレンジ・ストレッサーは業務能力向上に影響するが注意も必要

まず、チャレンジ[ヒンドランス]・ストレッサーは、レジリエンスを部分媒介して業務能力向上に正[負]の影響を与えることが明らかになりました。ただ、「だからタフ・アサインメントは重要!」とは単純にはならないことも明らかにされています。

具体的には、チャレンジ・ストレッサーとヒンドランス・ストレッサーとは高い相関関係があるためで、チャレンジ・ストレッサーを与えようとした業務アサインメントは、ヒンドランス・ストレッサーも同時に与えている可能性が高いと言えます。

レジリエンスの重要性

ではどうすれば良いのでしょうか。ここで注目すべきは、レジリエンスが両者を媒介している点です。以下の図をご覧ください。

池田ほか(2022)、151頁

若手社員の業務能力向上を高め、情緒的消耗感を軽減するためには、職務アサインメントによってチャレンジ・ストレッサーを高めようとするだけではありません。レジリエンスを高めることへの介入もまた有効だという示唆を示していると解釈できます。

もちろん、職務アサインメントの際の工夫も重要と言えます。曖昧な業務指示ではなく、目的や内容についてクリアにし、メンバーが遭遇する可能性のある状況を想定することが重要なのではないでしょうか。

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