【論文レビュー】アンケートにまじめに答えてもらうためにできる工夫とは?:増田他(2019)
アンケート調査を行うことがままあるのですが、同じ選択肢でずっと回答したり、逆転項目を読み飛ばして答えていると疑われる回答を見かけたりすることがあります。一般論として、回答者の立場に立ってみれば、どこまでアンケートにきちんと答えるかは難しく、特に設問数が増えてくると甚だ怪しくなるものです。今回は、ある研究会で先輩から教えていただいた論文を基に、アンケートにまじめに回答してもらうための工夫についてまとめます。
研究上の問いが秀逸
既に回答を回収したデータから不良回答を取り除くことは難しい作業となります。その基準は様々あるようで、先行研究を踏まえた上で本論文では「何をもって不良回答とするのかの基準は必ずしも明確ではない。」(p.463)としています。
そこで本論文では、そもそも不良回答をどのように防ぐのかという事前の対応について方法を検討しています。この問いは秀逸だなーと感じます。以下では細かい話は端折り(詳細は論文をお読みください)、仕事でも活かせる内容に絞ってまとめてみます。
冒頭で宣誓するアプローチ
結論から述べますと、本論文では冒頭宣誓(Taking an Oath to answer seriously)という手法の有効性が検証されています。つまり、アンケート調査の回答直前の段階で「あなたはこれからの設問に真面目に回答しますか」というような文章に対して、チェックする項目を設けるという手法です。私はみたことがない(あるいは記憶がないだけ?)のですが面白いですね。
複数回答質問で態度を測る
冒頭宣誓のアプローチの効果性を検証するために、冒頭宣誓でチェックをした回答者と、チェックをしなかった回答者やそもそも冒頭宣誓の項目を設けていない回答者と回答傾向を比較しています。その際、MA質問(Multiple Answer question:複数回答質問)への回答内容を以て比較しているのですが、これは複数回答を求める質問への回答態度が、真面目に回答したかどうかを検討しやすいためです。
反対のケースを想定してもらえばわかりやすいと思います。つまり、真面目に回答する態度が弱い場合、複数回答に対しても一つだけ回答して終わらせようとか、そもそも複数回答ということを読み飛ばしてしまう、ということがあるでしょう。つまり、複数回答質問に対して単一(あるいは極めて少数)の回答をしている人は真面目に回答していない可能性がある、というわけです。
その結果、他のサンプル群と比較して、冒頭宣誓にチェックをした回答者は実際に真面目に回答する傾向を示した、と著者たちは結論づけています。
実務ですぐ使える工夫
Google フォームのような簡易なアンケートツールが増えてきているので、研究だけではなく企業においてもアンケート調査をする機会は増えている印象です。なるべく現実を照射するような回答を得る工夫をするために、本論文の結果は示唆的です。
冒頭に「あなたはこれからの設問に真面目に回答しますか」という項目を一つつけるだけであれば、回答時間は5秒程度増えるだけです。この5秒の工夫だけで、真面目に回答する方が増えるのであれば、とても効果的な方法であると思えます。
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