見出し画像

【論文レビュー】ジョブ・デザイン研究の碩学がジョブ・クラフティングに物申す!?:Oldham & Hackman(2010)

ジョブ・デザイン研究といえば、ハックマンとオルダムの職務特性理論です。1970年台に彼らが提示したこの理論は、現代の企業組織においても機能し得る、ジョブ・デザイン研究の一つの到達点と言えます。しかし本論文では、彼ら自身が職務特性理論の限界も見えているとし、その要因としてビジネスの本質そのものの変化をあげています。

Oldham, G. R., & Hackman, J. R. (2010). Not what it was and not what it will be- The future of job design research. Journal of organizational behavior, 31(2‐3), 463-479.

ビジネスの変化

職務特性理論では、①スキル多様性(skill variety)、②タスク・アイデンティティ(task identity)、③タスク重要性(task significance)、④自律性(autonomy)、⑤フィードバック(feedback)の五つの観点に基づいて、組織・上司がメンバーに付与する職務を動機付けられやすいものに設計するという考え方を取っていました。

企業組織において長期的な業務を、安定的なキャリア志向性を持つ社員に対して提供する、という職場であれば職務特性理論に基づいてメンバーを動機づけることは可能でしたし、今でもそうした環境であれば有効でしょう。日本の大企業では、現在でも有効な状況は多いと考えられます。

しかし、オルダムとハックマンが述べているビジネスの変化は、働く職場を構成する人たちの変化です。個人事業主が普通に働き、プロジェクト・チームには社内外の異なる組織からメンバーが集まり、上司は必ずしも一人ではなく、長期雇用保障が当たり前ではない、といった環境を例示しています。

こうした変化している職場においては、職務特性理論が活きる領域が縮小してきているということがオルダムとハックマンが冷静に述べている指摘なのでしょう。

ジョブ・クラフティングへの言及

ビジネスの変化を経た現在の職務を鑑みて、オルダムとハックマンはジョブ・クラフティングの着眼点を肯定的に捉えています。メンバー自身が職務を工夫しながらカスタマイズすることは有効だとしているのです。

その上で今後のジョブ・クラフティング(以下JC)研究の発展に向けて、明らかにしてほしい点を主に五点ほど取り上げています。

①JCの効果は、もたらす結果から見るのか、プロセスから見るのか?
②JCを促す要因は何か?
③JCは単発のアクションなのか、継続する一連のプロセスなのか?
④JCを行う人の特性は何か?
⑤JCがもたらす副作用は?

今後、JCを研究する際に考慮したいポイントと言えそうです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?