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【読書メモ】(2/8)概念の把握と多次元性:『組織の心理的側面 組織コミットメントの探求』(高木浩人著)

第2章では、組織コミットメントという概念を研究者がどのように把握しようとしてきたのかの努力の歴史が解説されるという、後から研究する者にとっては垂涎ものの章です。

以前、服部先生の書籍を基に概説した通り、単一次元から多次元構成へと至る流れが詳しく述べられています。

単一次元時代

後続する組織コミットメント研究者に最初に大きな影響を与えたのはベッカーであるとしています。著者によればベッカーは、組織コミットメントを「組織と個人の交換関係の上に成り立つ」(34頁)ものと捉えました。

組織に対して個人が時間や労力などを投資することで、将来における何らかのリターン(報酬、安定的勤務など)を得ようとすることが組織に留まり続けようとする意欲であるとベッカーは考えました。これはサイドベット(side-bet)という呼び方でも有名で、功利的に組織に留まろうとする人の心理を組織コミットメントとして表そうとしました。

功利vs.情緒 

これに対して、組織に対する愛着という観点で組織コミットメントを捉えようとしたのがマウディやポーターです。ポーターの主要論文を以前扱ったように、OCQ(Organizational Commitment Questionnaire)という測定尺度を開発して情緒や愛着から組織コミットメントを捉えることを提唱しました。OCQは現時点でも組織コミットメントの尺度として評価を得ています。

単一では測れない!

情緒と功利の何れか一つの次元では組織コミットメントを捉えられないとしたのが、メイヤーです。こちらも以前のブログで取り上げましたが、①情緒的、②継続的、③規範的の三つの次元で捉えようとしたものです。

情緒的コミットメントはマウディやポーターの流れを汲み、継続的コミットメントはベッカーの流れを汲むものと理解できますが、それに加えて規範的コミットメントという新しい要素をメイヤーは提示しました。理や情といった理由がなくとも、「組織にはコミットすべきである」とするこの次元は、日本の企業人にも理解しやすいかもしれません。

組織コミットメントを三つの次元によって切り分けて理解することで、離職に対するトータルでの打ち手と、詳細な分析内容によって個別具体的な打ち手を検討する要素を提供するものとして、メイヤーたちの三次元説は評価されています。

あとがき

日本における展開では、当初は帰属意識の研究が盛んにおこなわれました。帰属意識研究とくれば「関本・花田」の一連の論文になるわけでして、本書でも論及されており、学部時代から読んでいたなといまさらながら思い出しました。。。そのうち読み直して、気が向いたらアップします。


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