【論文レビュー】40歳代以降に求められる学習とキャリアのあり方とは?:吉田(2023)
タイトルにもしてみましたが、40歳代という私自身も含まれる年代のビジネスパーソンにとって、なかなか味わい深い内容の論文を読みました。本論文のような、良質なデザインによるインタビューに基づいた論文を読むと、読んだ後に余韻が残るような気がします。
おとなの学びとは何か?
小中高大とリニアに学んでビジネスパーソンとして働き始めたあとの学びを「おとなの学び」とざっくり呼ぶ場合、そこには多様なものが含まれます。そのため、腑分けしないと論じる際に齟齬が生じてしまいかねません。
本論文が興味深い点の一つは、おとなの学びについて、①勤務先の中でのものか外でのものか、②学びの期間が短い(機会)か長い(連続性・繋がり)か、という二つの軸で以下のような四章限に分けて、先行研究を整理している点です。
ライフコースへの着目
このような先行研究の整理を踏まえて、本論文では、一回の学びの機会ではなく学びの経歴(図の右側)について企業という垣根を越えた(図の上も下も含む)ものに焦点を当て、ライフコースの観点で研究をされています。
ライフコースについては、Elder(1985)の「年齢によって区別された、一生涯を通じてのいくつかのトラジェクトリ(軌道・人生行路)、すなわち人生上の出来事についてのタイミング、持続期間、配置および順序に見られる社会的パターン」という定義を引いています。人生という長いスパンを視野に入れつつそこで見られる社会的パターンに着目した概念と捉えればよさそうです。
発見事実のまとめ
こうした研究上の関心に則って、58歳から65歳までの四名の調査協力者に対するインタビューを基に質的に分析をされています。各年代において経験した印象的な出来事と学びについて丹念に抽出されていることが見て取れます。
発見事実としてまとめてくださっているものを箇条書きにすると以下の三点と言えそうです。
30歳代までは企業内での職務による学びが中心
40歳代では役割・環境変化に伴い、自組織での限界感・閉塞感等のネガティヴな学びを契機として企業外での学びが増加
40歳代での起業外での学びが50歳代以降のキャリア方向性の獲得や人生の前向きな統合に結実
40歳代における企業内でのネガティヴな学びが契機となって社外での学びに目が向くかどうか、が鍵になるのかもしれません。拡大解釈だとは思うのですが、環境変化や自身の認識の変化に伴って長期的な壁に当たった際に組織外に目を向けられないと、学ぶことができずに不平や不満を社内で言い続ける存在になってしまうリスクがある、とも言えるのかもしれませんね。
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