【読書メモ】『組織社会学』(渡辺深著)
本書は、組織についてさまざまな側面から論じる組織社会学の教科書です。網羅的に書かれているのでぜひご関心がある方には一読をオススメしたいですが、以下では、組織における曖昧さのなかでいかに認識するかに焦点を当てた非合理モデル(第五章)を読み解いてみます。
組織化
非合理モデルの文脈で登場するのがカール・E・ワイクです。ワイクは、「意識的な相互連結行動によって多義性を削減するのに妥当と皆が思う文法」(83頁)と定義される組織化を提唱しています。この組織化には三つの段階があります。
(1)イナクトメント(enactment)
創出と訳せますが、ワイクのイナクトメントはそのまま片仮名で使われることが多いようですね。本書では「相互作用を通じて、自分の世界、環境、状況のイメージを構成(構築)する積極的な過程」(84頁)という詳しい説明が為されています。
この詳説からも社会構成主義(構築主義)と近しい意味合いが強く伝わるかと思います。客観的な事実があるのではなく主観的に事実を構成(構築)するということが提示されていて、それに加えてのイナクトメントの特徴は、自らの行為によって認識を創造するという点にあると言えそうです。
(2)淘汰(selection)
二つ目の段階は淘汰です。selectionはイナクトメントと異なり、なかなか強い言葉に訳出されています(笑)。
イナクトメントは、行為によって主観的に認識を創造するのですが、そこで創造されるものには複数のものが同時多発的に生じます。そうした多義的に認識される世界解釈を選択して残していく過程が淘汰です。
(3)保持(retention)
最後の段階は保持です。多義的な複数の解釈が淘汰された後に、規則やルーティーンとして、必要なものが残されて組織に保持されることになります。
価値観、規範、方針、文化といったものとして組織を安定させるというメリットがありますが、安定させることは逆機能となる可能性もあります。つまり、新たなイノベーションを生んだり改革を行う際には抵抗するものとなりかねないためです。
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