【論文レビュー】ポルトガルでのキャリア・アダプタビリティ尺度研究:Duarte et al.(2012)
本論文は、ポルトガルでのキャリア・アダプタビリティ尺度に関する実証研究の結果に関するものです。最初に結論から記しますと、他のヨーロッパ諸国とは少し異なる回答傾向と言えそうです。
記述統計
ポルトガルでの調査は、①9年生から12年生までの学生を対象とした平均年齢15.04歳の255名、②平均年齢46.62歳の現在働いている社会人395名、③平均22.43歳の職業についていない大人266名、という三つの群を対象として行っています。
24設問と4つの下位尺度の記述統計はこちらになります。
いくつか天井効果が出ていると思われる設問がありますね。南北アメリカ大陸や中華圏での回答傾向と少々近い状況です。
言語による欠測?
統制(control)の設問1と自信(confidence)の設問5は欠測になっていて、この欠測の状況はブラジルと同じです。ブラジルもポルトガル語での調査でしたので、この二つの設問はポルトガル語だと取りづらい内容なのかもしれませんね。ポルトガル語は全くわからないので、あくまで状況に基づく勝手な推測です。
モデル適合度
24設問・4下位尺度での確認的因子分析の結果としての適合度は、RMSEAは0.061、SRMRは0.049と問題ない適合度を示しています。他国での調査の論文では出していないCFIも出していて0.97と非常に高い値となっています。
対象ごとの比較が面白い!
上述したように、ポルトガルでは三つの群で調査を行っているのですが、それぞれの群ごとの比較が載っていてなかなか興味深いものがあります。
まず意外なのは、職業についていない大人の方が就職している大人よりもスコアが高いという点です。直感的には意外な感がありますが、職業に就いていない人たちの平均年齢が22.43歳であることから働き始める前の学生であるために高いのかもしれません。
また、日本で言うところの学卒以上の群と大学を出ていない群との比較ではそれほど差がないという点も興味深いです。たった5ページのショート・レポートのような分量でここまで書ける論文は著者たちの高い意欲が見受けられて心地よいですね!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?