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【論文レビュー】専門職に自組織の中でキャリアをすすめようと意欲を持って働いてもらうためには何が必要か?:山本ほか(2012)

プラトー(plateau)とは高原を意味する言葉で、ビジネスの場面では停滞とも訳されます。ざっくり言えば「もうこれ以上は上がれない」という感覚を示すものです。本論文は、専門職を対象として、何がキャリア・プラトーや職務プラトーに影響するのかについて明らかにしている興味深い内容です。

山本寛, 松下由美子, 田中彰子, & 吉田文子. (2012). 看護職のキャリア目標の設定とキャリア・プラトー化との関係―内容的プラトー化との比較の観点から―. 産業・組織心理学研究, 25(2), 147-159.

キャリア目標がキャリア・プラトーを抑制

MBOと併せて、社内におけるキャリア目標を設定して上司と面談するという運用をしている企業も多いと思います。このように、個人がキャリア目標を設定すること自体がキャリア・プラトーを抑制することが本論文では明らかになりました。

p.153

上の表を見れば、重回帰分析の結果として、キャリア目標は職務プラトーの抑制(職務挑戦性)よりもキャリア・プラトーの抑制(昇進可能性)により大きく影響することがわかります。キャリア・ゴールそのものがプラトーの低減につながることは、キャリア・ゴールを設定するという現場での運用が大事であることの証左とも言えるでしょう。

スケジュール設定までは不要

キャリア目標には日付までつけないとね、ということをマネジャーが言うケースは多いように思います。肌感覚的にはスケジュール設定が大事だということは、まあ理解可能です。ただ、本論文では、キャリア目標の設定は大事だけれども、その目標をスケジュールに落とし込んでもプラトーの低減に繋がらない、という結論を導き出しています。

p.154

見慣れない方にはわかりづらいかもですが、上で書いた内容は、「スケジュールの有無」の行をご覧いただければわかるかと。

職務経験や研修参加がプラトー化を抑制

キャリア目標に日付をつけることはプラトー化を防ぐことには繋がらないのですが、キャリア目標に関連する職務経験や研修参加がキャリア・プラトー化を防ぐことが明らかになりました。

上に引用したTable 4を改めてご覧ください。研修としては「認定看護師研修」というものが有意な正の影響を与えていることがわかります。本調査の対象者は看護師という専門職です。専門職の場合には、キャリア・パスと関連した職務に求められる知識やスキルが向上する研修がキャリア・プラトーの低減につながるようです。

また、キャリア・パスにつながる職務に関連する経験や役割(「役割・経験の合成変数」)がキャリア・プラトーが高まることを防ぐことが明らかになりました。知識・スキルだけではなく、経験も含めて、本人のキャリア目標と関連するものを付与できるか、がマネジャーには求められるということでしょう。

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