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【論文レビュー】再び注目されつつあるエンプロイヤビリティ:北村(2022)

エンプロイヤビリティという言葉は、1990年頃から多く使われるようになったもので、環境変化の激しい雇用社会の中で生き抜くために個人が高めるべきもの、という文脈で語られてきました。しかし本論文が主張している結論は、個人と組織が共同責任でキャリア開発を行うという文脈の中でエンプロイヤビリティを捉えるべきである、としています。企業で働く個人にとっても人事にとっても興味深い論考と言えそうです。

北村雅昭. (2022). エンプロイアビリティ研究の現状と今後の展望-持続可能なキャリアの視点から.

持続可能なキャリア

個人と組織が共同責任でキャリア開発を行うという考え方は、持続可能なキャリア(sustainable careers)という比較的新しいキャリア概念で呼ばれるものです。少し前にまとめたことがあるので、ご関心のある方は以下をご笑覧ください。

定義

個人視点だけではなく組織視点も加味しているため、エンプロイヤビリティの捉え方も変化するべきであると著者はしていて、持続可能なキャリアの文脈を踏まえて以下のように定義しています。

「長期にわたり、内部、外部の労働市場において、自らの能力を最大限に発揮しつつ、組織に貢献する仕事を得るための個人の能力」

p.201

エンプロイヤビリティへの再注目

持続可能なキャリアでエンプロイヤビリティが重要な概念の一つとして扱われていることもあり、最近のキャリア研究ではエンプロイヤビリティがトレンドの一つになっていると著者はAkkermans & Kubasch(2017)を引用して述べています。Akkermans & Kubasch(2017)によれば、2012年から2016年の五年間におけるキャリア研究の主要学術雑誌をレビューしたところ、全体のキーワードのうち第三位になっています。

Akkermans & Kubasch(2017)p.588

エンプロイヤビリティについて改めて見てみたいなと思える興味深い論文でした。

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