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組織文化をどのように認識するのか。:『組織シンボリズム論』(坂下昭宣著)を読んで。

自社における組織文化をマネジしたり、変革しようとする動きは昨今においても多いようです。組織文化は、今でも人事や組織を考える鍵概念の一つと言えそうです。

組織文化を考える上で最も大事なこととして、組織文化やシンボリズムを調査・検討する際には、その拠って立つ社会学の認識論的パラダイムに自覚的であることをご指摘されています。ざっくり言えば、機能主義的な認識論+アプローチ解釈主義的な認識論+アプローチの二つが本書では概説されています。

速い行動が求められる企業組織においては、ともするとアプローチの部分にのみ意識が向きがちです。そのため認識論的パラダイムを無視した無理のあるパッチワークになったり、「他社が行っている施策だから」という理由で導入したりして(これは新制度派組織理論で説明されます)、社員を混乱に招くことになりかねません。

シンボリズムと組織文化

本書の鍵概念である二つについて整理します。まず、シンボリズムとはシンボル(象徴)を外化するものであり、先日取り上げたハッチ先生が物理的・行動的・言語的という三つのシンボルを提示していることは、本書でも扱われています。

こうした物理的・行動的・言語的なシンボリズムにより、組織の中でシンボルが共有されると、組織において大事にされる意味が体系化されます。この意味体系が組織文化である、と本書では定義されています。

機能主義的な認識論+アプローチ

冒頭でも書いた通り、この組織文化および組織シンボリズムへの認識論およびアプローチには二種類あります。一つめが機能主義的な認識論+アプローチです。

機能主義的組織シンボリズム論のポイントは三つです。(1)シンボリズムは客観的実在物として捉えられるという認識論に基づき、(2)組織文化が一定の機能を果たす存在として組織の維持存続に貢献し、(3)組織のトップによるマネジメントが可能な存在となります。

その典型は強い文化というアプローチにあります。経営側が画一的な文化を組織および社員に落とし込もうとするアプローチで、それによって業績向上を目指す施策です。坂下先生の別の論文を基に以前詳説したので、ここでは端折ります。

文化を客観的な実在物として捉えるこのアプローチを取ると、文化を定量的な測定が可能と考えます。その際には、パーソンズの構造機能主義におけるA(Adaptation:適応)、G(Goal-Attainment:目標達成)、I(Integration:統合)、L(Latent-Pattern-Maintenance:潜在的パターンの維持)が理論的根拠になります。

したがって、穿った言い方をすれば、組織文化を定量的に調査する(このことの是非はここでは問いません)際には、AGILをはじめとした基礎付けの理論に則っているかどうかを細かく確認する必要があるでしょう。

解釈主義的な認識論+アプローチ

解釈主義的組織シンボリズム論の論拠となる主な理論は、シュッツの現象学的社会学、ライターのエスノメソドロジー、ブルーマーのシンボリック相互作用論、です。

ポイントとして、シュッツの提示した社会的世界の二次的構成、すなわち組織のメンバー自身が意味解釈して意味を構成する動的な局面(一次的意味構成)を、観察者が二次的に再構成する(二字的意味構成)という認識を取ります。

したがって、組織文化は客観的に把握できるものではなく、間主観的な生成され続けるものとして捉えられ、インタビューやエスノグラフィーといった質的研究が求められることになります。


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