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【論文レビュー】越境者を受け入れる側の学びとは?:小山(2022)

越境は、越境する側だけが学ぶわけではありません。越境者を受け入れる側にも学びが生じます。本論文では、海外人材を受け入れる日本人上司を対象とした調査から、越境者を受け入れる側(以下「被越境者」)に焦点を当てた学びのプロセスを明らかにしています。

小山健太. (2022). 越境者を受け入れる側の学習. 経営行動科学, 32(1-2), 47-61.

越境者と越境者を受け入れる側の相互作用

著者は、香川(2015)をレビューして、異文化を習得して「自分のものになった」という認識を得るまでに至ることを異文化専有と呼んでいます。異文化専有のためには、越境者と被越境者の双方が、相互にやり取りを行って新たな価値観や視点を受け取るというプロセスが必要です。

こうした相互作用のプロセスは、越境の進行プロセスとして以下の表のように表せると著者はしています。

小山(2022)50頁

被越境者の重要性

越境からの学びを越境者だけではなく被越境者も行うためには何が必要なのでしょうか。越境者と被越境者との人数を比較すると、職場におけるマジョリティは被越境者です。そこで越境学習が生じるためのポイントは被越境者にあると言えます。

表1の越境者と被越境者との相互作用のプロセスにおいて、レベル4と5では対話が挙げられています。お互いに理解し合うための対話の重要性があるのに加えて、その前提として特にレベル2・3にあるような異文化専有の経験もまた必要であるという点に着目するべきでしょう。

越境者が学び、それが越境元にとって還元できるためには、越境者だけではなく被越境者のマインドセットと行動が大事であり、両者の相互作用が重要である、という点に留意したいものです。


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