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【記事まとめ】組織コミットメント

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組織コミットメント関連の論文・書籍のレビューをまとめてみました。
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#論文レビュー

【読書メモ】組織コミットメント、ジョブ・エンベデッドネス:服部泰宏著『組織行動論の考え方・使い方』[第10章]

組織コミットメントをもっと先行研究せねばとなりまして、真っ先に読もうと思い浮かんだのが、以前も読んで感銘を受けた服部泰宏先生の『組織行動論の考え方・使い方』です。企業人事にとって、これほど読み応えのある書籍というものはなかなかございません。 第12章を中心にまとめた以前のnoteは以下となりますが、今回は組織コミットメントが取り上げられている第10章をまとめます。 持つべきは同期の縁私はこれまで、同期と呼ばれる存在にいつも助けられてきました。学校でも企業でも、いずれのタイ

【論文レビュー】リアリティショックと組織コミットメントの不思議な関係!?:Dean et al.(1988)

職業柄(研究柄?)、リアリティショックに関する設問を読み込む機会があり、設問文という極めて具体的な文言を読んでいると、リアリティショックという概念って改めてなんだっけ?というゲシュタルト崩壊的な感覚に陥りました。今回は、古典的なリアリティショックの実証研究を取り上げます。 リアリティショックとはリアリティショックは、新しい組織での現実に直面した際に私たちが感じるショックです。本論文では、リアリティショックを以下のように定義しています。 こちらについては尾形真実哉先生が『若

【論文レビュー】組織アイデンティフィケーションと組織コミットメント:高尾(2013)

本論文では、組織アイデンティフィケーションを「組織との一体性(oneness)や組織に帰属していること(belongingness)に対する認知」(66頁)と定義されています。では、こうした組織との一体感のようなものと組織コミットメントとは異なるのでしょうか。高尾先生は、先行研究レビューを行い、日本での実証研究を紹介したうえで、両者は異なるものと捉えるべきであると結論づけています。 高尾義明. (2013). 組織アイデンティフィケーションと組織コミットメントの弁別性-日本

【論文レビュー】「組織コミットメントは三次元から成り立ちます」と決定付けた論文:Meyer et al. (1993)

組織コミットメントは、①情緒的(affective)、②継続的(continuance)、③規範的(normative)という三つの次元で構成される概念です。という考え方が現時点でも組織コミットメント論の主流なのですが、それを決定づけた存在が本論文です。 Meyer, J. P., Allen, N. J., & Smith, C. A. (1993). Commitment to organizations and occupations- Extension and t

【論文レビュー】組織コミットメント研究史:高橋(1997)

本論文は組織コミットメント研究に関するレビュー論文です。組織コミットメントの定義としては「ある特定の組織に対する個人の同一化(identification)および関与(involvement)の強さ」(Porter et al. 1974)を用いています。 Mowday et al.(1982)によれば、組織コミットメントが高いメンバーは、①当該組織の価値観や目標の強い受容および信念、②自らを組織の代表とみなして行う多大な努力、③当該組織への引き続いての所属を希望する強い意

【論文レビュー】組織コミットメント研究の古典的論文:Porter et al.(1974)

組織コミットメントの定義は、本論文で言及されているものが現在においてもよく用いられます。そうした意味で古典的な組織コミットメントの論文と位置付けられるものでしょう。意訳的に書けば、組織コミットメントとは「所属する組織に対して感じる一体感と巻き込まれ感の強さ」(604頁)を指すものです。 Porter, L. W., Steers, R. M., Mowday, R. T., & Boulian, P. V. (1974). Organizational commitment

【読書メモ】組織コミットメントと近い概念があるけど何が違うの?:高木浩人著『組織の心理的側面 組織コミットメントの探求』(4/8)

第4章では組織コミットメントと類似する概念との相違について検討がなされます。ワークコミットメント、職務満足度、離転職の意志、知覚された組織サポート(POS:Perceived Organizational Support)、心理的契約、との関連が考察されています。 職務満足度との関連まず相違点について二点挙げられています。第一に、職務満足度はある時点での職務に対する満足度であるのに対して、組織コミットメントは組織全体に対する感情です。二つ目は時間軸の相違で、組織コミットメン

【論文レビュー】日本企業における帰属意識研究のはじまり:関本・花田(1985)

最初の修士時代に院ゼミか学部ゼミで配布されて「ふむふむ」と読んでいた論文を、まさか12年後に真剣に読み返すことになるとは思いませんでした。三色ボールペンで書き散らしてあるものの、28歳の私の理解はそれほど悪くなかったようで、40歳の私は大変助けられています(笑)。 本論文は、日本における組織コミットメントあるいは帰属意識に関する草分け的な存在と言えます。こういう論文を読んでいると、学部時代はゼミ生間でニックネームで花田先生を呼んでいたのに、もはや裏でも先生としか言えなくなる

【論文レビュー】価値観の変化に対する企業人事の対応とは!?:関本・花田(1986)

昨日に続き帰属意識研究に関する古典的論文のレビューです。働く社員の帰属意識の変遷を踏まえて、企業が人事システムとしてどのように対応しているのかをキャリア・トリー法によって明らかにしています。 関本昌秀, & 花田光世. (1986). 11 社 4539 名の調査分析に基づく企業帰属意識の研究 (下). ダイヤモンドハーバードビジネス, 1, 53-62. 昨日のnoteはこちら。 (URL:関本・花田(1985)レビュー) キャリア・トリーから見える昇進昇格制度の運