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【論文レビュー】「組織コミットメントは三次元から成り立ちます」と決定付けた論文:Meyer et al. (1993)

組織コミットメントは、①情緒的(affective)、②継続的(continuance)、③規範的(normative)という三つの次元で構成される概念です。という考え方が現時点でも組織コミットメント論の主流なのですが、それを決定づけた存在が本論文です。

Meyer, J. P., Allen, N. J., & Smith, C. A. (1993). Commitment to organizations and occupations- Extension and test of a three-component conceptualization. Journal of applied psychology, 78(4), 538-551.

三つの次元に関する定義は、服部泰宏先生が『組織行動論の考え方・使い方』の199頁できれいに訳してくださっているのでそちらを以下に引用します。

①情緒的コミットメント(affective commitment)
従業員の組織への感情的な愛着、同一化、そして積極的な関与

②継続的コミットメント(continuance commitment)
従業員が組織を去るときに発生するコストに基づくもの

③規範的コミットメント(normative commitment)
組織に居続けなくてはならないという義務感からくるもの

本論文では看護師に対する量的調査を行い、確証的因子分析の結果として三つの次元が独立的に存在することが明らかになっています。ではなぜ組織コミットメントが三つの下位次元に別れることに意味があるのでしょうか。その理由として著者たちは二つの点を取り上げています。

①次元ごとに帰結が異なる可能性があるから

まず、組織コミットメントを構成する三つの次元ともに離職率の低さと関係しているという共通点があるとしています。その上で違いがあるからこそ、三つの次元に別れることが重要であるとしています。

たとえば、情緒的コミットメントと規範的コミットメントは、職務パフォーマンスと組織市民行動にポジティヴに影響することが考えられます。愛着を感じていたら居続けなければならないと考えることが、日常的な仕事ぶりや役割以外の行動を喚起するということでしょう。

反対に、継続的コミットメントは上記の二つの行動には影響しないかネガティヴに影響すると著者たちはしています。サンクコストを理由に組織に残ろうとする人であれば、職務パフォーマンスにはあまり関係せず、必要以上の業務はしようとしないからであると考えられます。

このように、組織コミットメントという一つの概念だけで捉えると、誤った施策を打ってしまう可能性がありますが、三つの下位次元に分けることでそれぞれのデータに基づいて適切な施策を打てる可能性が高まるのです。

②他のコミットメント概念への拡張の可能性があるから

本論文の調査対象は組織コミットメントですが、コミットメントには他の概念もあります。本論文では、職業コミットメント(occupational commitment)への適用可能性が指摘されています。

具体的には、組織コミットメントのうちの情緒的コミットメントは、組織に対する愛着だけではなく職業に対する愛着へと概念化することが可能なのではないかと指摘しています。つまり、組織コミットメントという単一概念では他のコミットメント概念への拡張を検討することは難しいですが、下位概念に落とし込むことで他の類似概念との関係性を検討することができるわけです。

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