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私が更年期に注力する理由


こんにちは産婦人科医の高尾美穂です。

今回は久しぶりに、私が自由にお話をさせていただく時間にしたいと思います。

ここ最近、私がずっと暇さえあれば取り組んできたことというのが、10月に新しく出版された更年期に関する本の作業です。

最後の修正で赤字を入れるという作業を、2週間ぐらいかけてしておりました。
皆さんの中にも、既に読んでいただいている方もいらっしゃるかもしれませんが、このリアルボイスを読んでくださっている皆さんに、その本に書かれている事を、少し紹介してみたいと思ます。

私はこれまで例えば、「卵巣がんのすべて」といった、皆さんの生活にあまり縁のないような医療者向けの本の一部を書いたり、もちろん論文、それから医学雑誌を書いたりすることはたくさんありました。

一般の方向けの本は、2019年の秋に出版させていただいたヨガの本。
「超簡単ヨガ 骨盤底筋のトレーニングの本」ですが、こちらは世界文化社という出版社が声をかけてくださりました。

有名なヨガインストラクターの方が本を出版されれば、もちろんたくさん売れるのだと思います。


しかし、私のような一産婦人科医が出版した本を多くの方が手に取ってくださったというのは、本当に私自身も有難いと思っています。

今回も、世界文化社さんがまた新たに、更年期についての教科書のような本を、私と作りたいと言ってくださったのが、2021年の年始です。

つまり、たくさんの方がNHKのあさイチで、出会っていただくよりも前に、この本の企画をいただいておりました。そして、2回目のオファーということで本当に私も嬉しく思っておりました。

お仕事をするにあたり、一度ご一緒した方から、もう一回ご一緒したいと言っていただくことは大きな喜びです。これは間違いなく良かったなと思っていただけたから、再度声をかけていただけるのだと思います。

ですので、こういった2回目のオファーというものは本当に嬉しく思うわけです。そういった中で、今回この更年期の教科書というものを世に出すことになりました。

私が更年期にこだわる理由


では、なぜ私がこんなにも「更年期」という時期にこだわるのか。

それは、私自身がまさに更年期世代であることも確かです。

女性の人生において、身体で困ったことがあれば、それに対する治療をされると思います。
例えば、子宮頚がんが見つかりましたなどの状況であれば、手術しよう、病院にかかる事になると思います。

しかし、この更年期の問題というものは、実際のところ、周りの人たちに対してなかなか説明しづらい不調だと思いませんか?

インフルエンザに罹患して、熱が38.5度を超えている時の方が、会社を休みやすいとおっしゃる方が多いです。

自分が、更年期で調子が悪いと思っていても、それをなかなか人に伝えられない。
だから、自分自身がなんとなく怠けているのではないかという気分になってしまう。

自分の不調を、他人に伝えることができないから、自分自身が無理をして仕事を続けて、より悪化する。
こういったような声をたくさんいただきます。

そういった中で、なぜこのような課題が起きてしまうのかと考えると、ご本人が困っているという状態に対する、周りの理解が十分ではないからでしょう。

これは、社会の理解ですよね。

更年期世代の方が、どういった困ったことを経験するのか。
この事は、まず男性の皆さんにとっては未知の世界なわけです。
未知の世界というと、言葉はいいのですが、人生において一回も経験することのない不調という意味です。

さらに当然まだ更年期に至っていない20〜40代前半くらいの女性にとってはどうでしょうか?

更年期という言葉はよく聞くけれども、自分がまだ経験していないからこそ、どんな感じなのだろうというような不安感や、漠然としたイメージしかなかったりするわけです。

そしてまさに更年期世代という方たちにとっても、4割ぐらいの方は、特に不調を感じずに過ごしていける人がいます。

つまり更年期という世代において、つらいと症状を感じる人たちというのは、社会におけるごく一部の人たち。

しかも、その状況を経験していない人たちが、もちろん世の中には、たくさんいます。
経験した人たちの中においても、特に困らずに過ごしていける人もいる。

その中で、もちろん半分以上は男性の社会です。

この働くというような社会において、更年期というものを経験しないで過ごしていける人たちが半数以上。

その中で困る人たちというのは一部分だよねというイメージに至るわけです。
一部だからこそ、なかなか自分の辛さや、困っていることを理解してもらえないというような状況。
これを100%理解して欲しいとは思いません。

ただ、やはり私たちに必要なのは、自分以外の誰かが困っているという可能性があるという視点です。

例えば盲目の方が、白い杖をついて歩いておられる音。
そして、道路上の点字部分に、自転車が置いてあったりすることもありますよね。
そういった時には、声をかければいいのでわかりやすい。

しかし、更年期における不調で困っておられる方が、すごく分かりやすいかと言われれば、そうでもないわけです。

更年期世代で、だいたい40代の後半〜50代前半ぐらいかなというような方たちが体調悪そうだなと感じた時に、別に私たちがこちらから声をかけることもないわけです。

でも、ご本人は困っているかもしれない。
こういった困っているかもしれないという想像力を持つだけでもいいのではないかと思うのです。

選択肢がある事を知ることの重要性


もちろん困っているご本人には、前向きに理解をして、自分の身体でどういうことが起こっているのか。

もしくは、それより手前の年代の方たちに、これから先どういう事が起こる可能性があるのかを伝えていただく。
そしてそれだけではなくて、できることがあるという事を知っていただく。

つまり、対策方法がある時代だよという事を知っていただきたいわけです。

私たちが今から100年前の、1900年代の前半に生きていたとしたら、使えないような方法を、今の時代に生きているからこそ選ぶことができる。

そういった、メリットを賢く受け取る前向きさが、必要なのではないかという事が言いたいのです。

社会において、仕事をしながら過ごしていく一員として、自分の体調を理解していただきたいという思いは、もちろんその通りです。

でも自分なりに、ちゃんと対策しているという姿勢も大事だと思います。

生理痛が辛いです。もちろんそうなのです。
生理痛が辛いので会社を休むのは、全然良いとは思います。

しかし、その毎月やってくる生理痛に対して、ちゃんと対策できることはやっていますという姿勢が、社会人としては必要だということです。

こういう言い方をすると、高尾先生は結構厳しいねと思うかもしれません。しかし、私は産業医もしております。

産業医というのは、企業のメリットも考えていかないといけない立場です。社員の健康は守る。

しかし、その上で企業の利益というものも、追いかけていかないといけない立場ですから、自分が困っているのであれば、ちゃんとできることをしていこうねというのが、産業医として社員の皆さんに伝える姿勢が大事だと思っております。

そう考えると、困っていることを理解していただきたい。

これは広く社会に言いたいことではありますが、困る可能性のある人。
今まさに困っている人というのは、困りっぱなしでいるのではなくて、自分が困っていることに対して、どうしてなのだろうかと考えてみる。

そして、それに対して何か対策方法があるのであれば、前向きにトライしてみる。

こういったような姿勢が、大事なのではないかなと私は思っています。

そんな中で、今回このリアルボイスで、この本のご紹介するのは非常に恐縮ですが、閉経について、もしくは更年期という時期について前向きに理解していただけたらなという思いで、この1冊を書きました。

皆さんの中で更年期のことで困っておられる方。
しかも、色々な本があるけれども、なんとなくどれにしたらいいのか分からないと、迷っておられる方。

私がこれまでにお話をしてきたような、このお話をしているような口調で、なおかつ論文のデータも載せてお届けできるようにしております。

女性ホルモンの話。
それから女性の体の話も、もちろん掲載されておりますが、それ以外に運動のことや、睡眠の事が載っております。

その重要性については、かなりしっかりお話を載せています。
どれくらい睡眠をとったらいいのか。
それから睡眠が十分取れてないと、どういったリスクがあるのか。

このあたりが、しっかりと論文のデータを載せていますので、更年期という時期が、私たち女性にとって健康の棚卸しをするような時期。

そこから先の人生。
ある意味40年以上続くこの時期を、自分にとって前向きな、しかも凪の時期。

つまりホルモンに揺さぶられなくてもいいこの期間を、自分の思うような時間にしていくために、更年期という時期を前向きに過ごしていくことが、大事なのではないかなという思いを持っています。

人生はつながっている


さらに、よくいただくのが、
「この更年期の後はどうなのですか、閉経以降はどうなのですか?」と聞かれます。

この時期は、もうホルモンの変化に揺さぶられることのない、非常にある意味穏やかな時期です。

だからこそ、自分の思ったことを頑張ったらそれなりの効果が得られる。
そういう考え方を持っていただくと良いのではないでしょうか。

生理が順調にあった頃には、生理痛で困る。
それから生理前にメンタルが落ち込む。

こういった波に揺さぶられ、そして妊娠・出産という楽しいライフイベントの後にもメンタルが落ち込むような産後の時期。

そして更年期には大嵐。

閉経を迎えた後というのが、なんとなく怖い。

そんなイメージがあるかもしれませんが、その後というのは、ホルモンの波に揺さぶられない、非常に穏やかな時期がやってくる事を知っていただきたい。

ただ、その時期というのが私たちの生活習慣、運動習慣、しっかりと休むという習慣、あとは食事の習慣。

こういったものが顕著に反映してくるような時期だと考えると、更年期に突入するくらいの年代から、自分の生活習慣に良いであろうと言われる事を積み重ねていく。

こういった考え方が、まずは大事だろうと思っております。

いずれにしても、よく私がお話をさせていただくように、人生はつながっています。

私たちの体、私たちの心は、この状態で人生を続けていく以外にないのです。

そう考えると、今の私たちの選択。

毎日どんなものを食べるのか。誰とどのような気持ちで過ごすのか。
そしてどのぐらいしっかり休むのか。
運動はどんなものを、どれくらい取り入れるのか。

こういった日常的な選択が、私たちの20年後を作る。
こういう考えを持って、ぜひ皆さんにとって、今日一日も良い時間になりますように。

毎日がベストであれとは思いませんし、毎日がベストでなくても良いのです。

しかし、よかれと思うことを選んでいったその先の人生と、行き当たりばったりに過ごしていた人生では大きな違いが生まれてしまいます。

だからこそ、ぜひ皆さんが今日は元気だな、今日は余裕があるなと思える日は、少しだけ良い選択肢を自分なりに選んでみる。
そんな毎日になったら素敵だなと思っております。

まとめ


今回は、更年期をテーマに私がここ最近取り組んでおりました、10月に新しく出版された 更年期の教科書についての思いを少しお話しさせていただきました。

私を含め、更年期世代の女性、本当に皆さんよく頑張っておられると思います。

お仕事を持ちながら、お子さんを育てながら、介護をしながら、自分なりに今人生で悩んでいる時期だという方もたくさんいらっしゃるでしょう。

色んな皆さんの更年期。

その先には、また穏やかな日やホルモンの波に揺さぶられない時期が待っているのだという思いを持って、この更年期を、どうにかこうにか、みんなと一緒にやり過ごしていけたらなと思っております。


皆さんからの温かいサポートはすべて「保護ねこ活動の支援」に使わせて頂きます。 いつもご声援有難うございます。