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シン・仮面ライダー(同時上映 『EVANGELION:3.0(-46H) 劇場版』)

「シン・仮面ライダー」は庵野秀明の「シン」シリーズで最もつまらない作品だと思う。それは興行収入の数字に如実にあらわれていると思う。

「シン・ゴジラ」(2016)82.5億円
「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」(2021)102.8億円
「シン・ウルトラマン」(2022)44.4億円
「シン・仮面ライダー」(2023)20.2億円※上映中

興行収入は他作品と比べると圧倒的に低くなっている。「シン・ゴジラ」にしろ、「シン・エヴァンゲリオン」にしろ、「シン・ウルトラマン」にしろ、これまでの映画作品を1本も見たことがない、あるいは見たことはあるが映画館で鑑賞したことはないという人がかなり見ていたのではないかと思われる。また、細部を確認するためにリピートして見た人も多かったのではないだろうか。

その結果、「シン・ゴジラ」はハリウッド版やアニメ版を含めた全ての「ゴジラ」映画で最大のヒットとなったし、「シン・エヴァンゲリオン」は旧劇、新劇含めた全ての劇場版「エヴァンゲリオン」の中で最大のヒットとなった。「シン・ウルトラマン」は「シン・ゴジラ」や「シン・エヴァンゲリオン」に比べると物足りない数字かも知れないが、それまでの劇場版「ウルトラマン」が1作品も興収10億円を突破していなかったことを考えればこれは特大ヒットと言っていいと思う。

これに対して、「シン・仮面ライダー」は大成功とは言えないのが現状ではないだろうか。
確かに、これまでの劇場版「仮面ライダー」作品の中では最大のヒットとなっている。とはいえ、これまでの最大ヒット作だった「劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー」(2009)が19億円だから、ほんのわずか上回っただけなんだよね…。

過去の「シン」シリーズは、「ゴジラ」と「ウルトラマン」が東宝の単独配給、「エヴァンゲリオン」が東宝と東映などの共同配給。それに対して「仮面ライダー」は東映の単独配給ということで、業界最大手の東宝の興行網をフルに使った展開ができないという大人の事情はあるにせよ、それでも、20億円ちょっとしかあげていないというのはおそらく、配給サイドとしてはかなり期待を下回っている数字ではないかと思う。
同じ東映作品の「レジェンド&バタフライ」も期待値以下の成績となっているが、それでも「シン・仮面ライダー」を上回る興収24.4億円をあげているから本作は大コケと言われても仕方ないレベルだと思う。

だから、東映としては何としてでも「シン・仮面ライダー」の数字を最低でも「レジェンド&バタフライ」程度にするために、併映作品をつけて続映することにしたのだろう。

何か昔の映画館みたいだね。80年代までは上映中の作品がコケると、ちょっと前に話題になった作品(再上映作品など)をオマケにつけて2本立てにして公開するとかよくやっていたからね。

90年代初頭までは東京23区などでは1本立てで公開していても地方では2本立てで公開するのがデフォルトになっていて(一部超大作を除く)、中には東京23区では上映されない作品とのカップリングで地方限定公開されることもあった(スプラッシュ公開と呼ばれていた)。
そうしたスプラッシュ公開作品が急遽、コケた作品の併映作品として東京23区で上映されることもあった。

また、邦画系公開作品は80年代までは実写でも2本立て(今はアニメや特撮、ピンク映画以外では2本立て、3本立てなんてほとんどないが)公開の作品も多かったが、2本立て番組がコケた時は3本立てになることもあった。

こうした上映の仕方をしていたのは当時の日本の映画館がブロックブッキングというシステムを採用していたからだ。

シネコンが映画興行の中心になる前は、○○劇場ほか全国△△系(興行会社名、東宝・東映・松竹など。場合によっては、邦画系・洋画系といった文言も入る)ロードショーというクレジットで公開されていた。
そして、こうした形態で公開される作品、たとえば、東映邦画系の作品なら東映直営もしくは東映と提携した東映邦画系の劇場でしか上映されない。しかも、その系列に属する各劇場はその系列のメイン館(先述したクレジットの○○劇場のこと)と同じ作品を上映しなくてはいけない。

年間スケジュールに沿って公開されるので、ある作品の上映期間が4週間と決められていれば、いくら閑古鳥が鳴いていても4週間はその作品を上映し続けなくてはならないということだ。

その大コケ作品をただ上映し続けていては、映画館は大赤字となってしまう。だから、1人でも多く客を呼ぶために同じ配給会社の別作品をオマケにつけて何とかしのぐということをやっていた。

銀座地区にあることが多いメイン館や新宿、渋谷などの都心部の劇場では、全国的には大コケの作品でもそれなりに入っていることがあるので、こうした補強策というのは主に銀座・新宿・渋谷以外で行われることが多かったが、本当に酷い大コケの作品だと銀座でも併映作品がつくことがあったように記憶している。

現在、ブロックブッキングというシステムは消滅している。たとえば、東宝系のシネコン、TOHOシネマズでは東宝作品のみならず、東映作品も松竹作品も上映されるし、公開1週目の成績が悪ければ2週目は上映回数が減らされるし、逆に入りが良ければ複数のスクリーンを使って上映されたりもする。
それにブロックブッキングの時とは異なり配給サイドが上映中止とアナウンスしない限りは入りが良ければずっと上映することも可能だし、入りが悪ければ2週目は1日1回の上映にして、その翌週には上映しないなんてことだってできるようになった(例外はあるが)。

だから、「シン・仮面ライダー」も打ち切ろうと思えばとっとと打ち切ることは可能なはずなんだよね。

にもかかわらず、併映作品をつけて続映するということは、最低でも「レジェンド&バタフライ」の数字を上回り、今年の東映実写作品で最大のヒット作にしないと示しがつかないと思っているってことなのかな?

そして、「シン・仮面ライダー」を無理矢理にでも今年の東映を代表する実写ヒット作品にするため、その併映作品に選ばれたのがまさかのまさかのエヴァの短編作品だった…。

というか、タイトルに劇場版を付け音響面に手を加えてはいるものの、基本は「シン・エヴァンゲリオン」のBlu-ray/DVDに収録されていた特典映像だ。

いくら、同じ庵野作品だからって、特典映像を上映するってどうなのよって気もするな…。

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」劇場公開時に展覧会の展示映像に手を加えた実写短編「巨神兵東京に現わる 劇場版」が併映されたけれど、あの時は最初から2本立て公開だから元々は劇場公開作品として作られていなかった短編も気にならなかったが、今回は興収を伸ばすための客寄せパンダだから、ちょっと弱いんじゃないかなという気がする。
シネコンでの上映が中心だから、長編の2本立て上映は難しいというのは分かるんだけれどね…。まだ、「シン・エヴァンゲリオン」本編をBlu-ray/DVD用に手直ししたバージョンで再上映した方が集客効果はあったんじゃないかなという気はする。

まぁ、そう言いながら自分もその特典映像の劇場版目当てで2度目の「シン・仮面ライダー」鑑賞をすることにしたんだけれどね。

最初に見た時にエンドロールで“長澤まさみ”という文字を見つけた時に、“どこに出ていたっけ?”と思ってしまったんだよね。

出番は少なかったし、メイクをしていたので分かりにくかったけれど、消去法でいけば彼女が演じたであろうキャラはアレしかなかったし、ネットやツイッターを検索すれば、すぐに自分の推察が正解だったことは分かったけれどね。

だから、本当に長澤まさみがあのキャラを演じていたかどうかきちんと確認しなくてもいいかなと思ったりもした。映画自体つまらなかったから、いくら浜辺美波演じるヒロインが可愛いとはいえ、演技は超微妙とはいえヒロインの親友にして敵であるキャラを演じた西野七瀬が可愛いとはいえ、見直すのは拷問かなと思ってもいた。

しかし、ここ10年くらいの長澤まさみ出演映画のほとんどを劇場で見ている者としては、彼女のスクリーン上での活躍をきちんと確認しないでスルーしていいのかという思いもあった。
 
だから、エヴァの短編が併映となったおかげで見直す動機付けができたといったところだろうか。

エヴァ短編は、この短編目当てで「シン・エヴァンゲリオン」のBlu-rayを購入し既に視聴済みなので、どちらの作品も見るのは2度目ということになる。

それぞれ、二度見した印象を記しておこう。

「EVANGELION:3.0(-46h) 劇場版」

タイトル表記も劇場版を含むものに書き換えられていた。そして、本作の上映中に遅れて入場してくる奴がやたらと多かった。「シン・仮面ライダー」は見たいが本作には興味がないという人が多いということか…。もしくは、本作と2本立てになっていることを知らない人も結構いるということなのかな?

ところで本作はヴィレのオペレーター、北上ミドリを主人公とした作品だが、大人バージョンの顔と少女時代の顔、全く別人だね。どちらも可愛いけれどね。

そして思った。「エヴァ」は「シン・エヴァンゲリオン」で完結したと思っていたけれど、結局、エヴァというプロジェクトを終わらすことはできないんだろうね。
さすがにシンジの話をやると、また別ルートのリブートかよと叩かれるから、シンジ以外のキャラを使ってスピンオフとかプリクエルみたいな感じで続けていくんだろうね。本作とか舞台版エヴァとかそんな感じだしね。

「シン・仮面ライダー」

とりあえず、長澤まさみが出ていることはきちんと確認できた。
そして前回見た時も思ったが、やっぱり昔の「仮面ライダー」と異なり、作中の思想の左右が入れ替わっているよねと思った。平成以降の「仮面ライダー」シリーズのファンや、庵野作品を好む現在のアニオタに自民支持者が多いから彼等に媚びたのかな?

昔のショッカーは明らかにナチスドイツや旧日本軍がベースになっていたと思うけれど、本作におけるショッカーは鷹の爪団ではないけれど幸福を追求するために世界征服をしようとしている連中で、それこそ、環境を守るためなら人類が滅亡しても仕方ないみたいな思想だからね。それって、左翼・リベラル・パヨク的だからね。つまり、左寄りの思想の連中が悪役になったってことだよね。

それから、洗脳というのは本来は右側の勢力が得意とする手段なんだけれど、右傾化が進んだ日本では左寄りの日教組や政権批判が多いマスコミの常套手段と思っている人も多いから、本作に出てきた一般市民を洗脳するショッカーの描写は左派批判なんだろうね。まぁ、共産の志位和夫の独裁体制を見れば左派を悪役にしたくなる気持ちは分かるけれどね。左の連中は自分たちの正しいと思っていること、信じていることから1ミリでもずれることを許さず、少しでも反論すると、こちらの全人格を否定したりするからね。確かに悪の組織っぽい。意外と右の連中の方が間違いを指摘すると謝ることが多いんだよね。安倍政権だって逆ギレしたけれど、野党やマスコミのみならず一般市民からも批判されると方針を変えたりしていたしね。

昭和時代には右翼的と思われていた「宇宙戦艦ヤマト」が最近のリメイク版では左翼的思想をちらつかせ、老害ネトウヨのアニオタのおっさんに酷評されているのとは逆パターンって感じかな。

まぁ、昭和の頃には極右と思われていた三島由紀夫が最近では左翼のように思われたり、支持母体の創価学会の思想から見れば共産党と組んだ方が自然な公明党が自民党と連立政権を組んだり、韓国が大嫌いなネトウヨが統一教会の言いなりの自民党を支持したりとか、思想の変化はよくあることだけれどね。

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