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未成仏百物語~AKB48 異界への灯火寺~

アイドルはよくホラー映画に出演する。おそらく、その理由として考えられるのは、

●観客をビックリさせることが主な趣旨だから、演者の演技力の有無があまり気にならない
●撮影期間が短いから多忙なアイドルでも参加しやすい
●低予算だから興行的に失敗しても、そんなに損失が大きくない

といったあたりではないだろうか。

AKB48グループや坂道シリーズのメンバーもこれまで、多くのホラー映画やテレビ・配信のホラードラマに出演してきた。

まぁ、ほとんどはなんだか良く分からない作品だったりもするが、中には、AKB時代の島崎遥香が主演した映画「劇場霊」や「ホーンテッド・キャンパス」のように、作品的にも主演アイドルの演技的にも評価できるものもあるので、アイドル主演のホラー作品は必ずしもクソではないと思う。
もっとも、「劇場霊」に関しては、中田秀夫作品だから、他のアイドル出演ホラーよりは出来が良くて当たり前なのかもしれないが。

そして、こうした演技経験の少ない人がホラー作品に出演するのは、何も日本のアイドル界に限った話ではない。

ハリウッドの大スターと呼ばれる人たちの中にはキャリア初期にホラーに出演している人も多い。

ジョニー・デップが初めて出演した映画は「エルム街の悪夢」だし、ブラッド・ピットはキャリア初期には、その「エルム街の悪夢」から派生したテレビシリーズ「フレディの悪夢」に出演していた。

レオナルド・ディカプリオの映画デビュー作は「クリッター3」だし、ジョージ・クルーニーも無名時代には「ハイスクールはゾンビテリア」とか「リターン・オブ・ザ・キラー・トマト」なんて作品に出演していた。

そして、キャリア初期がホラーというのは俳優だけではない。監督だってそうだ。
スティーブン・スピルバーグ監督がテレビ作品の監督だった頃に手がけた「恐怖の館」は後のプロデュース映画「ポルターガイスト」のプロトタイプとも言える作品だし、彼を一躍有名にしたテレビ映画「激突!」の得体の知れないトレーラーに追われるドライバーという設定はホラー的だ。
また、映画監督としての彼を有名にした「ジョーズ」は動物パニックものだが、広義ではホラーと呼んでいいと思う。

また、ジェームズ・キャメロン監督の長編映画デビュー作「殺人魚フライングキラー」も動物パニックものだ。また、「ターミネーター」シリーズは回を重ねるごとにSFやアクションの度合いが高まっていったが、1作目はホラーの要素が強かった。

そのほかにも、「エイリアン」シリーズのリドリー・スコットやデヴィッド・フィンチャー、「エルム街の悪夢」シリーズのレニー・ハーリンなど、ホラー映画をきっかけに巨匠やヒットメーカーになっていった監督は多い。

つまり、日本だろうと、ハリウッドだろうと、俳優だろうと、監督だろうと、低予算のホラー作品は、失敗しても損失が少ないから、新人のお試し起用がしやすいってことなんだろうね。

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そして、本題に入るが、本作「未成仏百物語」にはAKBメンバー8人が出演しているが、ほとんどが演技経験の少ないメンバーだ。
この中で最も知名度のある小栗有以だって、テレビドラマや舞台版の「マジムリ学園」では主演を務めているものの、映画出演は今回が初めてだ。
というか、「マジムリ」での演技はほめられたものではなかったが…。
でも、そのゅぃゅぃが鑑賞の動機だったりもする…。

なので、期待せずに見ることにしたが、期待を裏切らない、なかなかのクソ映画だった。

メンバー8人が人から聞いた怖い話や、取材で知った怖い話をそれぞれが披露し、そのエピソードごとにメンバーたちが感想を言い合うという形になっているが、エンド・クレジットを見れば分かるように、“原作”が存在するので、この作品はモキュメンタリー風の作品ということになるのかな。

というか、映画というよりかはテレビの怖い話系バラエティ番組って感じだったな。

画質も制作スタッフ(ディレクターやADなど)がきちんと、サイズやフォーカス、アイリスなんかを合わせずに適当にデジを回して録った映像って感じで、こんなので普通の映画と同じ入場料金なんか取ってはダメだよ!

そして、そうしたそれぞれのメンバーが披露する怖い話のクオリティも低い。
そもそも、タイトルが百物語なのに、作中で紹介されるエピソードが8つというのも意味不明だが(シリーズ化する気なの?)、その8つのエピソードが全て、メンバー出演の再現ドラマ風ならまだしも、そういうのは4つだけなんだよね。

残りのエピソードのうち3つは取材ものだが、コレはメンバーによる心霊スポット体験取材と、何故か2人のメンバーが聞き手に分かれて、それぞれ別々の場所を訪問している事故物件取材ものって感じ。わざわざ、事故物件ものを2人のメンバーに振り分けているのは、明らかにネタ不足だと思う。しかも、このバラエティ番組風取材パート、全然、マスクどころか、フェイスシールドもしていないんだよね。つまり、取材に見せかけた台本通りの演技をしているだけってことでしょ?本当、何がやりたいんだか…。

そして、残った1エピソードが最も酷い!
メンバー8人全員が集まっている座談会兼供養会場で、その担当メンバーが話しているだけ。
イメージ画像とかイラストすらインサートされない…。
おそらく、そのエピソードの再現ドラマを作る予算も時間もないからなんだろうとは思うが、だったら、別のエピソードを用意しろよって感じだ!

そして、呆気に取られてしまったのが、EDテーマがお経だったこと…。
作中で紹介された実話とされる怖い話に登場した霊的な存在のものたちを成仏させるためのお経のはずなのに、そのお経がよまれている場面をベースに、キャストやスタッフのクレジットを出すってどういうこと?
普通の感覚だったら、そんなのタタリが怖くてできないはずなんだけれどね…。
つまり、平気でそういうことをしているってことは、作中で紹介された実話とされる怖い話は全部ウソってことでは?

まぁ、所々怖いシーンはあったけれどね。

でも、どのエピソードも中途半端なところで、きちんとしたオチもなく終わってしまうから、全然、オムニバス映画とか短編映画集を見たような気分にはならないんだよね。
BSとかCS系の低予算のバラエティ番組を見させられているような感じかな。

結論としては、“ゅぃゅぃが出ていなければ、こんなクソ映画なんて見ないよ!”って感じかな…。
まぁ、ゅぃゅぃの演技は酷いし、ゅぃゅぃの出ているエピソードに限らず、台詞回しが古くさいし、この自称映画は全くオススメできません!

今年、劇場で鑑賞した映画の中でのワースト作品候補かな。

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