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あのコはだぁれ?

中田秀夫にしろ本作のメガホンをとった清水崇にしろ、ジャパニーズ・ホラーを世界に広めたホラー界の巨匠の近作はどれも酷いものばかりだ。なので、本作も期待せずに見ることにした。

感想を一言で言えば、映画初主演の渋谷凪咲の演技はほめられたものではないが(それでも見ているうちに慣れる)、全体としては久しぶりにゾクっとくるシーンのあるホラー映画を見たという感じだろうか。

最近はジャパニーズ・ホラーもハリウッド製のように、ビックリさせるだけのアトラクション的な作品や、ネタに走った笑える系の作品、怖いのは怪奇現象ではなく人間というテーマの作品が増えていて、いわゆる心霊現象的なものは減ってしまった。そういう最近の傾向を考慮すれば本作は健闘していた方だと思う。



ただ、ツッコミどころ満載だった。

32年前に起きた生徒の不慮の死亡事故に関わった女子生徒2人がそれぞれ自分の子どもを同じ高校に通わせているのも、その当時の担任教師がそのまま学校に居座り今は校長になっているのも意味不明だ。そんな凄惨な事故があった学校なら自分の子どもを通わせたくないと思うのが普通の親だし、とっととこんな学校を離れたいと思うのが普通の教師では?

それから、32年前の事故は実はあるいじめられっ子の女子生徒が実行犯で、その彼女は自分の両親を利用して(殺害させて)自らの命を絶つことに成功したのに、現在の高校の多くの生徒や教師に目視されているのもご都合主義でしかない。普通、こういう存在って特定の人間以外には見えない設定にするものでは?

あと、その実行犯の両親は結果として娘を殺害したことになったために精神を病んで入院生活をしているのに、生霊として渋谷凪咲演じる代理教師の前に現れているのも謎だ。

まぁ、見ている間も見終わった後もツッコミまくるのが本作の正しい楽しみ方なんだと思うから、その辺はよしとするか…。

それにしても、いじめられっ子を心霊現象の元凶=悪役として設定するのって時代的に難しくなったのではないかと本作を見て思った。

悪霊となった32年前の実行犯の女子は学校ではいじめられ、家では寝たきりの祖母の面倒をみるヤングケアラーとしてこき使われていた。紛れもない被害者だ。こういう人を悪役にするのはどうかと思う。

「13日の金曜日」シリーズなど、いわゆるスプラッター映画で最初に殺されるのはルールを守らない奴とか、自由奔放なセックスをするカップルといった、殺害されても仕方ないよねと思う人物だった。

でも、本作で悪霊に巻き込まれるのは悪霊の弟と付き合っている代理教師とか、親がいじめに加担していたことを知らなかった生徒やその友人だ。悪役をいじめられっ子にした場合、殺害の対象は殺されても仕方ないよねと思うクズにするべきだと思う。

この作品では、善良な人たちが殺害の対象になっているから、本来ならいじめの被害者である悪霊に対して同情することができない。それは決定的な作劇上の欠陥だと思う。

ところで、「シックス・センス」的なオチの作品をいまだに作っているのはどうなのよって思う。もう、25年前=四半世紀前の作品だぞ!

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