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パスト ライブス/再会

Black Lives Matter運動がかつてほど騒がれなくなった理由の一つに、自分たちは差別されていると主張する黒人が、白人以上にアジア人を差別している事例が次々と明らかになったこともあると思う。

そんな流れを受けて、ここ最近のアカデミー作品賞には、“アジア枠”というのがあるとしか思えないくらい、アジア系監督が手掛けた米国映画やアジア映画が毎年ノミネートされるようになった(⭐︎は作品賞受賞作品)。

2019年度
パラサイト 半地下の家族(韓国映画)⭐︎
2020年度
ノマドランド(中国出身監督による米国映画)⭐︎
ミナリ(韓国系米国人監督による米国映画)
2021年度
ドライブ・マイ・カー(日本映画)
2022年度
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(中国系米国人共同監督による米国映画)⭐︎
2023年度
パスト ライブス/再会(韓国系カナダ人監督による米国映画)※本作

正直なところ、2018年度以前なら作品賞にノミネートされなかったであろう作品ばかりだ。まぁ、「パラサイト」は2018年度以前でも国際長編映画賞(旧・外国語映画賞)の本命か対抗馬にはなれたとは思うが。

ちなみに、2019〜22年度の“アジア枠”作品賞候補作品は、最終的に何らかの部門で受賞を果たしたが、本作は無冠に終わっている。

そろそろ、“アジア枠”優遇策も限界に来ているのだと思う。

黒人、アジア人、ヒスパニック、女性、LGBTQ、障害者。この辺の要素がなければ、作品賞にノミネートされにくいというのはどうかと思うしね。

今回、「オッペンハイマー」が11年ぶりに全米興収1億ドルを突破した作品賞受賞作となり、リベラルやフェミが絶賛した「バービー」(これも大ヒット作品だが)が1部門のみ、しかも、歌曲賞のみの受賞で終わったのも、こうしたポリコレ要素に対する嫌悪感が高まっていることが背景にあるのではないかと思う。

まぁ、「オッペンハイマー」は、ユダヤ人差別、赤狩りというハリウッドが昔から好きなテーマを含む作品だから評価されただけで、特別、傑作だとは思わないが…。



そんなわけで、あまり期待せずに本作の鑑賞に臨んだ。想像していた通り、傑作ではないが、アカデミー作品賞のノミネートに“アジア枠”とか“マイノリティ枠”、“フェミ枠”みたいのがなければ候補にはならなかったよねとしか思えない内容だった。

繰り返し言うが、よくある話だしね。

しかも、典型的な男女で異なる感想を抱くタイプの作品だ。

女性が見れば、“女性差別やアジア人差別を乗り越えて、欧米でポジションを築いたヒロインは素敵”と絶賛すること間違いなし。

男が見れば、“また、自分のキャリアやライフスタイルを上昇させるために男を都合よく利用する女の話かよ”と批判的なコメントになると思う。

ぶっちゃけ、「ラ・ラ・ランド」と同じパターン。

「ラ・ラ・ランド」は男女ともにクリエイティブ職従事者だったから、男でもクリエイティブ職の者なら同作に共感を抱けたけれど、本作に関しては、クリエイティブ職に就いているのは女性の方だけだから、同作のように男性クリエイティブ職関係者からも共感を得るのは難しいと思う。

ただ、アジア人の描写に関してはリアリティがあったと思う。

冒頭、ヒロインと初恋の相手の韓国人男性、現在のパートナーの白人男性の3人組を見て、3人の関係性をああだこうだと予想する欧米人の声が入っていた。3人とも白人、3人ともアジア人ならそういうことは言われないだろうから、やっぱり、欧米社会におけるアジア人のポジションは低いんだろうなというのを実感した。

また、アジア人の見た目の描写もリアリティがあった。

カナダに移住し、その後、さらに米国に移住したヒロインは目つきや顔つき、服装が完全に欧米人が好むアジア人のビジュアルになり、見た目も欧米社会における年相応な感じで老けていく。

一方、初恋の相手の韓国人男性はアラフォーに突入しても、欧米人から見れば童顔で若者に毛が生えた程度にしか見えない。精神的にも親離れしていないからか、幼い感じに描かれている。

この辺の描写はうまいなと思った。

というか、韓国に限らず、日本も中国もこんな感じだよね。

結局、東アジアで進む少子化って、女性の進歩に男がついていけないから加速しているのだろうか?まぁ、普段は家事も育児も給与も男女平等にしろと言っておきながら、都合の良い時だけ、儒教的・仏教的・保守的な思想(例えば、食事やデートの費用は男が出せ)を展開するから、男の方の金や時間がついていけなくなっているというのはあるとは思うが。





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