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『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』前章 –TAKE OFF-

「宇宙戦艦ヤマト」シリーズのリメイク版はシリーズ化されていて(ややこしい言い方だが)、これまでに「宇宙戦艦ヤマト」(これまた、ややこしい言い方になるが、最初のテレビシリーズ)をもとにした「宇宙戦艦ヤマト2199」と、劇場版「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」(過去のヒット曲・名曲をほとんど歌わなくなったジュリーが今でも歌う数少ない過去曲がこの主題歌)とテレビシリーズ「宇宙戦艦ヤマト2」をもとにした
「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」が発表されている。

「2199」と「2202」は全7章で構成された先行上映版が劇場公開されたのち、分割されて2クール26話のテレビシリーズとしても放送されている。
さらに、「2199」では総集編映画と、サイドストーリー映画も公開された。
このほか、「2199」と「2202」をドキュメンタリー風にまとめた総集編映画も公開されている。

「2202」単独の総集編映画やサイドストーリー映画が作られていないのは、「2202」が過去の「ヤマト」と比べて、リベラル思想が強かったからではないかと思う。

70〜80年代には「ヤマト」に対して軍国主義を美化するもの、賛美するものと批判する人たちもいた。それは、実際に作品を見たことがない人が戦艦大和にちなんだ名前というのに過剰反応した結果だとは思うが、ただ、右寄りな思想の人たちが好きな大和魂を鼓舞する要素があったことは否定できないと思う。

「2202」では、そうした愛国精神、保守思想のようなものがかなり薄まっていたので、過去作のファンからすれば批判したくなるのも仕方ないことなのだとは思う。

同じ70年代にスタートしたSFアニメでも、「機動戦士ガンダム」シリーズは、若い視聴者・観客、場合によっては女性に向けた作品も作られているので、新しいファンというのは開拓されているが、「ヤマト」は新作を作っても、決して、女性や若者に向けた作品作りにはなっていないので、新しいファン層を開拓できていない。

要はミリタリー好きでネトウヨ思想ともリンクしている中高年のオッさんがファンのコア層だから、そりゃ、リベラル・パヨク思想全開の「ヤマト」が支持されるわけはないんだよね。

まぁ、過去と丸っきり同じものを作るならリメイクなんてする必要はないんだから、個人的には、思想面でも現代的にアップデートされていた「2202」は、リメイクする意味のある作品だとは思ったけれどね。

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そして、今回の「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」は、「2199」、「2202」に続くリメイク版シリーズの最新作だ。
しかし、「2199」や「2202」のように、先行上映の劇場版が全7章。それを分割したテレビ放送版が全26話という構成にはなっていない。

「2205」の劇場上映版は2部作で、今のところテレビ放送の予定は発表されていないようだが、テレビ放送した際の話数は8話となっている。いずれも、大幅なエピソード数の減少だ。

とはいえ、これは別に「2202」の受けが良くなかったから規模を縮小したというわけではなさそうだ。
今回の「2205」は、テレビスペシャル「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち」をもとにしたリメイク版で(多少、テレビシリーズ「宇宙戦艦ヤマトⅢ」の要素も入れられてはいるようだが)、「2199」や「2202」に比べると対象範囲が狭いというのが理由のようだ。

「2199」はテレビシリーズ1本、「2202」はテレビシリーズ1本と劇場版1本が対象範囲だったから、そりや、テレビスペシャル1本とちょこっとの要素で先行上映版全7章、テレビ版全26話を構成するのは無理があるしね。

おそらくは、今回の2部作の後に、テレビシリーズ「ヤマトⅢ」の残りの要素と、劇場版「ヤマトよ永遠に」をリメイクしたものを作りたいんだろうね。かといって、今回の「2205」に「永遠に」の要素まで含めると、とてもではないが、全7章全26話ではまとまらない。そちらをきちんと作りたいから、今回は区切りの良いところで2部作にしようというみたいなことになったのかな?

本作を見た印象としては、「2202」のリベラル的思想は多少トーンダウンさせながらも残しつつ、「ヤマト」シリーズのコアなファン層であるミリタリーオタク的な層も喜ぶような勇壮さ、愛国精神的なものも「2202」よりは復活させた、折衷案的な作りに感じたというのが率直な感想かな。

まぁ、色々と昨今の国際情勢と照らし合わせたくなる内容ではあったかな

落ちぶれかけていたガミラスに対するガルマンの非常な言動は、日本に対する中国や韓国のように見えるし、それをガミラスが叩きのめす姿はネトウヨでなくても爽快な気分になるしね。

また、古代進と森雪を救うことになったのはポピュリズム政治のせいだという批判がされているが、それは、小池百合子とか、ネトウヨやアニオタに媚びたような発言で支持を増やそうとする自民党を想起せざるを得ない。

それから、結果としてガミラスと対立関係にある勢力を助けることになるような作戦は、地球とガミラスの同盟関係を危うくするものではないかという議論が作中でされているが、これは誰が見たって日米同盟の隠喩だ。
まぁ、日本=地球になっているのはどうかとは思うけれどね。というか、地球側の登場人物のほとんどが日本人っぽいってのはどうなのよって思うかな。

勿論、ガミラスに寝返った裏切り者扱いされていた薮を巡る国際結婚とか、国籍変更とか、人種とかの問題は言うまでもなく政治的なイシューだ。

そして、本作を見て思ったことがある。
古代進ってキムタクっぽいよね。


まぁ、キムタクは実写版「SPACE BATTLESHIP ヤマト」で古代を演じているのだから、古代にキムタクっぽい要素があってもおかしくはないんだけれどね。

「2205」における古代って、部下に対しては、“まぁまぁ、お前の言うことは分かるが、規則は守ってくれよ”みたいな事なかれ主義のようなことを言っているようにも見えるが、上司に対しては、結構、“あなたたちのやり方はおかしい”みたいに主張して、攻めの姿勢を見せるんだよね。

それって、マックのCMでキムタクが演じている団塊ジュニア世代の中間管理職キャラそのものだよね。

そう考えると、実写版「ヤマト」やマックのCMにキムタクを起用したのって、本当、よく考えぬかれたキャスティングだなって思う。

ところで、本作はTOHOシネマズ 池袋で鑑賞したが、池袋では本館を含めて2館で上映されているんだね。アニメ映画に関しては、聖地が完全に池袋になったって感じだよね。

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