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夏の三木孝浩まつり①「今夜、世界からこの恋が消えても」

予告編を見た時点でクソ映画のにおいはプンプン漂っていた。
そして、実際に見てみたら予想外通りのクソ映画だった。

Yahoo!映画のレビューって、ジャニーズ出演映画はどんなにクソ映画でもジャニオタによる絶賛コメントでいっぱいになるので信用できないけれど、まぁ、映画ファンを自負する人間なら、ほとんどの人が本作を見れば、クソ映画と呼ぶのではないかと思う。

これは本作のせいというよりかは、原作小説のせいなんだろうけれど、よくもまぁ、これだけ、どこかで見たような設定を恥ずかしげもなくパクリまくれるよね。

まず、一番の目玉となっている設定は、事故にあったヒロインが記憶障害になり、目覚めると、事故にあう前の記憶はあるものの、事故にあってからの記憶はリセットされてしまうというものだ。

これって、2004年に全米公開されたアダム・サンドラーとドリュー・バリモア共演のおバカ系ロマンティック・コメディの傑作「50回目のファースト・キス」の設定そのものをパクっているよね。

しかも、ヒロインがその日起きたことを翌日以降の自分に伝えるために日記を書いているというのも、周囲の人が毎日、ヒロインと同じ会話のやり取りをしているというのも同作品の丸パクリ。

ヒロインがアート志向なのも同じだし、誰がやるかはさておき、日記を改竄するという展開も一緒。

よく、ここまでパクれるよねって呆れてしまう。

しかも、この「50回目」って、オリジナルのハリウッド版なら日本で知名度の低いアダム・サンドラー主演作品だから、パクっても、一部の映画マニアが指摘するだけで済むかも知れないけれど、この作品って、2018年に監督:福田雄一、主演:山田孝之&長澤まさみという映画マニアでなくても知っている面子で日本でもリメイクされていて、こちらのリメイク版はそこそこヒットしているんだよね。

そんな内容の作品の設定を丸パクリにした小説を2020年に平気で出し、しかも、それを何とも思わずに映画化する人たちの気が知れない。

そもそも、オリジナルの「50回目」の設定もかなりデタラメなんだけれどね。一晩寝たら前日の記憶がなくなるというけれど、寝る時間が午前0時を過ぎたらどうなるの?起きていても記憶はなくなるの?寝なければ記憶は維持されるの?といった具合に疑問だらけだったしね。

それから、前日のことを忘れないために日記をつけているということだけれど、一体、日記を書くのにどれくらいの時間がかかっているんだ?というのもあるし、朝起きた時に読む日記の量も毎日増えていくけれど、一体、朝起きた時に何時間かけて前日までの日記を読んでいるんだ?というツッコミどころもある。

そこへ来て、本作ではうたた寝みたいなものでも記憶がなくなるという余計な設定を付け加えたり、日記を改竄するのがヒロインではなく、ヒロインの親友にしてしまったから、さらに話がデタラメになってしまった。

まぁ、正確に言うと、日記を改竄したのは、親友に頼まれたヒロインの(一応)彼氏の姉なんだけれどね。しかも、芥川賞を受賞したばかりの作家が、一般人の何日分あるか分からない日記をリライトするってありえないでしょ!芥川賞を受賞したばかりなんだから、マスコミ取材とか次回作とか色々あって、そんなヒマないでしょ(というか、芥川賞は実名で出てくるんだ…。日本映画にしては賞の名前が実名で出てくるって珍しいな)。

オリジナル版はまだ、ツッコミどころ満載な設定を無視できるくらい、アダムやドリューの演技が素晴らしく、サントラも良曲揃いだから(ドリューが大好きなスパンダー・バレエの“トゥルー”はウィル・アイ・アムとファーギーによるバージョンで使われている)、良作になっていたけれど、本作はジャニーズメンバーと東宝ゴリ推し女優の組み合わせだから、演技力もお話にならないレベルだしね。

まぁ、ヨルシカの主題歌は良かったと思う。2020年上半期くらいまでは夜好性アーティストのトップランナーだったのに、あっという間にYOASOBIにそのポジションを奪われ、一気にオワコンが進んだ印象だったし、正直、ここ最近の楽曲はピンと来ないものが多かったけれど、この主題歌は、2020年にアニメ映画「泣きたい私は猫をかぶる」に3曲を提供した頃のヨルシカが戻ってきたって感じはするしね。やっぱり、ヨルシカは、「夏+切ない」路線の曲が良いと思う。

話は戻るが、記憶障害のヒロインがクラスで人気者という設定も意味不明だ。そして、本作のパクリは「50回目」の記憶障害設定だけではない。

本気で恋をしないという約束をした2人が世間的にはカップルとして見えるように振る舞うという設定は本作の略称「セカコイ」にそっくりな「ニセコイ」でも見たし、愛する人が突然いなくなった理由が判明する系の話なんていくらでもあるし、しかも、そのいなくなった理由が“実は死んでいた”だからね…。

もう呆れてしまうばかりだ。

まぁ、原作も酷いけれど、映画版も酷いのは当然だよね。何しろメガホンをとったのは三木孝浩だ。

「僕等がいた 前篇・後篇」
「陽だまりの彼女」
「ホットロード」
「アオハライド」
「青空エール」
「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」
「先生!、、、好きになってもいいですか?」
「思い、思われ、ふり、ふられ」

といった、少女漫画やラノベ原作の青春もの、いわゆるキラキラ映画を次から次と撮っているキラキラ映画の巨匠だ(当然、ほめていません)。

そして、脚本は、三木孝浩と並ぶ同ジャンルの巨匠である(当然、ほめていません)月川翔だ。

こちらも、
「黒崎くんの言いなりになんてならない」
「君の膵臓をたべたい」
「となりの怪物くん」
「センセイ君主」
「君は月夜に光り輝く」

といった具合に、シネフィルなら酷評すること間違いなしの“話題作”を次々と世に送り出している。

さらに、可愛くて若い女性監督だから、オッサンどもに好かれているというだけで、個人的には過大評価としか思えない松本花奈も脚本家として名を連ねている。
彼女もテレビドラマおよび先行上映版が劇場公開された「ホリミヤ」やアイドルのMVなどで学園ものに手を染めている。

これだけ、キラキラ界の逸材が揃えば、そりゃ、クソ映画中のクソ映画になるのも当然だよねといったところだろうか。

ところで、三木孝浩は本作「今夜、世界からこの恋が消えても」の公開から約2週間後には「TANG タング」、さらに、その約2週間後には「アキラとあきら」も公開される。
要は三木孝浩はことしの夏休み映画3本を監督しているということだ。
需要はあるんだね…。結局、上から“こう撮れ”と言われた通りのものを作るから重宝されるんだろね。

それにしても、本作はいつもの三木孝浩路線だけれど、「TANG」は山崎貴が撮ってもおかしくないようなタイプの作品だし、「アキラとあきら」はTBSの「日曜劇場」みたいなテイストの作品だけれど、脱キラキラをはかろうとしているのかな?

そしてヒロイン役の福本莉子を見て思った。多分、ちょっと前なら、この役って浜辺美波がやっていたようなキャラだよねと。
実際、三木孝浩も月川翔も浜辺美波出演作品を撮っているしね。
浜辺美波と福本莉子が共演した「思い、思われ、ふり、ふられ」がターニングポイントになったのかな(これも三木孝浩作品)。
これ以降、べーやんはキラキラ映画には出なくなったからね(コミック実写化作品には出ているが)。

一方、福本莉子は本作をはじめ、「君が落とした青空」や「20歳のソウル」といった学園ものに次々と出演するようになっている。
べーやんと福本莉子は同じ歳だけれど、東宝「シンデレラ」オーディションとしては、莉子の方が1世代後だから、東宝的には世代交代ってことなのかな?
しかも、本作も「青空」も「ソウル」もジャニーズ共演だから、ジャニーズやジャニオタからの受けもいいのかもね。その辺が重宝される理由かな?

そういえば、福本莉子と言えば、現在、TOHOシネマズの幕間に流れる告知コーナーのナビゲーターを務めているが、先代の山崎紘菜は9年間、ナビゲーターを務めている期間にブレイクすることができなかったけれど、莉子はブレイクできるのかな?

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《追記》
25歳の古川琴音に女子高生役をやらせるって、なかなかチャレンジングだよね。まぁ、見ているうちに慣れてきたけれど。というか、ああいう女子高生っていそうだしね。ドラマ「前科者 -新米保護司・阿川佳代-」での薬物中毒の風俗嬢役も、「メタモルフォーゼの縁側」のBL作家役も自然だったし、何をやってもそれっぽく見えるというのは彼女の演技力のなせるワザなんだろうね。

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