見出し画像

コンフィデンスマンJP 英雄編

劇場版が2本作られたテレビドラマはそこそこある。でも、3本以上となるとそんなに多くはない。
時代劇の必殺シリーズが藤田まこと版で6本、それ以前のもので3本作られているが、これは異例中の異例と言ってもいい本数だと思う。
20年以上放送している相棒だって劇場版は正シリーズ4本とスピンオフ2本しか作られていない。
仮面ライダーや戦隊シリーズは、シリーズ全体ではVシネ作品やクロスオーバー作品も含めれば膨大な劇場版が作られているが、毎年内容が変わるそれぞれの作品の単独映画となるとやはり数えるほどしかない。

それでも、時代劇や警察もの、特撮ものはそれなりにコンスタントに劇場版が作られているのは、そもそも、こうしたドラマは映画会社が制作しているからだというのが大きいと思う(相棒や仮面ライダー、戦隊は東映だし、必殺は松竹だ)。

また、こうしたジャンルのシリーズは、海外ドラマのシーズン制に近い形で長期間にわたって展開されている(いた)ので、シリーズの撮影の合間に、もしくは、シリーズの放送休止期間に、スタッフ・キャストをそのまま使って撮影しやすいというのもあるのではないかと思う。

一方でキー局の1クール10話前後で完結するドラマの場合は、一度解散してしまったスタッフやキャストを再度招集するのが難しいので、劇場版を何本も作れないのだと思う。
スタッフやキャストの中には、○年以上も前に関わったドラマの仕事を今更やるのもなんだかなと思う人もいるだろうしね。
それから、最近はキャンセルカルチャーが蔓延しているので、前作公開以降の間に犯罪などを起こした人間が主要キャスト・スタッフに含まれていると、それだけで続編制作のハードルが上がってしまうからね…。

そんな中、キー局の1クールドラマでもコンスタントに劇場版が作られた作品もある。「踊る大捜査線」と「トリック」はいずれも4本の劇場版が作られている(「踊る」はさらにスピンオフ2作も)。

とはいえ、「踊る」の劇場版の公開時期を見てみると、1作目が1998年、2作目が2003年、3作目が2010年、4作目が2012年となっている。後半2本こそ、公開時期が接近しているが、それ以外はかなり間隔があいている。

「トリック」に至っては、1作目が2002年、2作目が2006年、3作目が2010年、4作目が2014年と、きっかり4年に1本ペースになっている(テレビシリーズは1作だった「踊る」とは異なり、テレビ版は第3シリーズまであるが)。

つまり、どんなに人気シリーズでも一度終わってしまった作品のキャストやスタッフを再招集するのは難しいということだ。

にもかかわらず、本シリーズ「コンフィデンスマンJP」の劇場版は驚くほどのハイペースで量産されている。

連続ドラマ版は1シリーズしか作られていないものの、劇場版は今回で3作目だ。2019年5月に1作目が公開された後、そのわずか1年2ヵ月後の2020年7月には2作目が公開されている。これは本来なら1作目同様5月に公開される予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期されて7月になったので、これがなければ、ファミリー向けテレビアニメの劇場版なみのペースで2作目が公開されていたということだ。

さすがに2021年は劇場版の公開はなかったものの、2作目の公開が2020年夏だったので本作は前作からはたったの1年半しか経っていない。ハイペースであることには変わらないと思う。

しかも、この間には主要キャストの不祥事(東出昌大の不倫)もあったし、2作目の公開前後には三浦春馬や竹内結子の急逝もあった。

さらに、主演の長澤まさみは「コンフィデンスマン」以外の映画にも次から次へと出演している。2019年は「コンフィデンスマン」を含めて5作品。2020年は「コンフィデンスマン」を含めて2作品。「コンフィデンスマン」のなかった2021年は3作品が公開されている。今年はこの後、「シン・ウルトラマン」の公開も控えている。
それ以外にも、吹替の仕事やテレビドラマ出演、舞台出演もしている。こんなに多忙なのに、毎年のように「コンフィデンスマン」の劇場版が作られていることは驚きでしかない。

おそらく、彼女はダー子を演じるのが好きなんだろうね。ハマリ役、当たり役って感じだしね。

それにしても、過去の劇場版2作もそうだったけれど、海外を舞台にした作品なのに、キャストのほとんどが日本人というのは不自然だよね。外国人と思われる人物まで日本人俳優が演じているしね。まぁ、映画ファンではなくドラマファン向けに作った作品だから、リアルな海外俳優の需要はないのかもしれないけれどね。

でも、エンドロールを見ると、実際に海外ロケをしているようだ。よく、このコロナ禍に撮影できたなと思う。てっきり、「劇場版 ルパンの娘」みたいに国内で撮影したものを海外と偽っているのか、あるいは、実景だけ撮影してグリーンバック合成とかしたのかと思ったが、きちんと“マルタ共和国で撮影”とクレジットが出ていたので驚いた。そんなにマルタの基準は甘いのか?

それにしても、このシリーズってご都合主義だらけだよね。

まぁ、デタラメな展開をツッコミながら見るためのもので、脚本とかはどうでもいいんだろうが…。毎回、全て特定の一人を騙すために組織ぐるみでやっていた演技でしたで終わるご都合主義の極みだしね。この程度の脚本を絶賛できる人は、これまでまともに映画を見たことも小説を読んだこともない人だと思う。まぁ、面白いけれどね。でも、面白い作品=傑作・名作ではないからね。最近、それを分かっていない人が多すぎる!

主要メンバー3人が捕まって、3人全員が同じ牢に入るってのもありえないしね…。

というか、女性メンバーもいるのに、「コンフィデンスマン」と言っているのはおかしいよね。その辺がポリコレ意識のない日本クオリティって感じだよね。さらに言えば、複数の仲間がいるんだから、ポリコレ表現抜きにしても、「コンフィデンスメン」だろ!その辺も国際感覚のない日本クオリティってところかな…。

まぁ、女性バンドや女性アイドルグループの単独公演を「ワンマン」ライブなんて言う国だからな…。
そりゃ、いまだに「紅白歌合戦」なんて古くさいコンセプトの番組を事実上の“国営放送”がやっている国だしね…。

戦後から高度経済成長期の男尊女卑が当たり前の時代なら、音楽くらいなら女性が勝てることもあっていいという「紅白」のコンセプトは意味があったけれど、建前上は男女平等になった今でも、そのコンセプトをやっているのはおかしいわけだしね。
そして、その男女平等がいまだに不完全だというのだったら、尚更、男女別にチームわけするのではなく、混合編成にすべきなわけだしね。
海外の一部の映画祭や映画賞が俳優部門を男優と女優でわけずに、ただ俳優としたりするようになっているのはそういうことなわけだしね。

そういえば、エンドロールのクレジットを見るまで、あの役がいくちゃんだとは気づかなかった。いくら、以前から舞台で活躍していたとはいえ、乃木坂46在籍中だったら、あんなセクシーな人妻役なんて、舞台ならともかく、映画ではやらないと思うから、おそらく、本作撮影中には既に卒業は水面下では決まっていたんだろうなって思う。まぁ、いくちゃんだと、すぐに気づかなかったということは、それだけ、彼女の演技が良かったんだとは思うが。

ところで、予告編では、本作が完結編みたいな感じで煽っていたけれど、全然、完結編じゃないよね。話の区切りはついているけれどさ。その気になればいくらでも続編は作れるのでは?まぁ、これまでの1年から1年半というペースでやっていくのは無理かもしれないけれどね。

《追記》
このシリーズ、毎回、Official髭男dismが主題歌を担当しているが、今回の“Anarchy”ってどこかで聞いたような曲だな。洋楽曲のパクリ?というか、髭男って、本当はこういう曲がやりたいんだろうねってのがよく分かる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?