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舞台「オッドタクシー 金剛石 (ダイヤモンド) は傷つかない」1月27日(金)19:00

本公演は本来なら去年7月に上演されるはずだったが関係者のコロナ感染により延期となっていた。正直なところ、リスケジュールは難しいんじゃないかと思っていたファンも多いのではないだろうか。

何しろ、本公演のメインキャラとなるアイドルグループ、ミステリーキッスを演じるのが、AKB48の小栗有以、日向坂46の濱岸ひより、≠MEの鈴木瞳美といずれも人気アイドルグループのメンバーだからだ(正確に言うと1人は偽メンバー役だが)。
同じグループのメンバー3人なら簡単にリスケできるだろうが、運営が異なる3つのグループからそれぞれ1人ずつとなると調整は大変だしね…。

それから、7月の際に会場として設定されていた渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホールはキャパが小さな小屋だったことからチケット争奪戦となったが、そのままの会場で再度チケット販売となったら、本来なら当選していた人ですら見られなくなってしまう可能性も高いから、どこでやるのかという問題もあった(今回は多少キャパが大きい大手町三井ホールに変更)。

また、延期となると世間の「オッドタクシー」というコンテンツに対する興味も薄れてしまう可能性が高かった。去年7月というのは舞台版を上演するにはベストなタイミングだったんだよね。
4月にテレビアニメシリーズ総集編(+α)映画「映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」を公開し、そのすぐ直後から地上波でテレビ版の再放送がスタート。舞台版はその最終話の再放送直後になるわけだから、「オッドタクシー」熱を持ったまま見てもらうことができたはずだしね。

そんな感じでリスケできるのか不安となる要素も多々あった作品だが、会場は変更となったものの、やっと上演にこぎつけることができた。

本作は、テレビアニメおよび総集編(+α)映画「オッドタクシー」の前日譚で、先述したミステリーキッスを中心に描いたものだ。

テレビシリーズや総集編映画で既に、擬人化された動物のような登場人物たちが実は動物ではなく高次脳機能障害を抱える主人公・小戸川の視点で描かれているために動物のように見えるだけと明かされているのでネタバレにならないと思うが、ミステリーキッスは動物姿ではなく人間として登場する。

余談だが、テレビシリーズや総集編映画では小戸川が登場しないシーン、というか小戸川がまた聞きですら知らないようなシーンでもキャラが動物姿なのはおかしいと思うけれどね。

そんなわけで、テレビシリーズにつながるどんなエピソードが繰り広げられるのかと色々と期待しながら観劇することになった。

しかし、その期待はあっさりと裏切られてしまった。ほとんど新しい情報はなかったからだ。

確かに、ミステリーキッスの二階堂と芸人の馬場が付き合うきっかけとか、ファンの今井がミステリーキッスのデビューライブを見に行った理由は描かれていなかった。でも、二階堂と馬場がマネージャー公認で付き合っていることや今井が5人しか観客がいなかったデビューライブに参戦したことはアニメで語られていたので単なる補足説明にしかなっていない。

また、センターから外された二階堂がかわりに選ばれた三矢に殺意を抱き、彼女を呼び出したものの、ミステリーキッスのメンバーになりたくて仕方なくて先回りしていた和田垣が三矢を殺害していたこともアニメでは明かされているし、しかも、和田垣が三矢を殺したところでこの舞台版は終わってしまっている。
和田垣がメンバーになり三矢を名乗るようになる過程をもう少し描いて欲しかった。

それから、女子高生行方不明事件を伝えるアナウンサーが読んでいる原稿がおかしい!“きょう4日深夜”なんて言い方、ニュース原稿ではしないからね!まず、“きょう”という言葉と日付を並べることはテレビニュースでも新聞記事でもない。テレビニュースなら、ただ、“きょう”だし、新聞なら日付だけだ。また、ニュース原稿では“深夜”という言葉は日付が変わる前の2時間程度の時間について言及する時しか使わない。しかも、“きょう”と言っているということは、その事件を伝える番組は日付が変わる前の夜のニュースでなくてはならない。となると、つい先程発生したばかりのニュースを伝える速報だ。なので、こうした場合の速報原稿では、“つい先程”という言葉が使われる。

いかに、本作の台本を書いた人間がテレビニュースも見なければ、新聞も読んでいないかというのが分かるかというものだ。日本の演劇・映画・ドラマ・アニメ・小説・コミックにリアリティがないのは、作っている人間がニュースに興味がないからなんだよね。そんな連中が事件や事故について書けるワケがないんだよ。

そして、一番酷いと思ったのは歌唱シーンだ。アイドルの話で、せっかく、AKBに日向坂にノイミーという人気アイドルグループのメンバーや、さらには元E-girlsまで出ているのに歌唱シーンが口パクってどういうことだよ!

本公演は一度延期されたものをリスケして上演にこぎつけた作品だから、個々のメンバーが多忙のため再度練習する時間を取れず、歌唱シーンは口パクでいいという判断になったのかも知れないが、そこは手を抜いてはダメでしょって思った。何のためにアイドルをキャスティングしたんだよって感じだ。

久々にクオリティの低い舞台を見たと感じでしまった。カーテンコールで拍手をしたくないと思ったくらいだ。

推しの関わった作品は批判しないという第2次安倍政権以降に蔓延した悪しき習慣のせいで日本は政治にしろ、エンタメにしろ劣化しているというのを改めて実感した。

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