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そして、バトンは渡された

予告編などで“4回も名字が変わった”というキャッチコピーが使われていたので、トリッキーな構成に隠された謎というのは簡単に想像がついた。
だいたい、小さな女の子に対してみんなが、“みぃたん”とあだ名でしか呼ばないのは不自然だったから、女子高生の優子とみぃたんが同一人物だというのは誰もが簡単に予測できたのではないかと思う。

それに、優子の現在の父親である森宮と、子ども時代に一緒に暮らしていた血のつながらない母親の梨花と思われる人物が接触しているシーンも出てきたからね。
時系列をきちんと説明せずに描き、優子とみぃたんが同じ時代を生きているように思わせていたが、まぁ、余程、読解力がない人でもない限りは途中で同一人物だと分かるとは思う。少なくとも、みぃたんがピアノを習いたいと言い出した時点でほとんどの人が優子と同一人物だと分かったのではないだろうか。

それから、梨花の不可解な行動の理由が終盤で明かされるが、どれもご都合主義満載なんだよね。というか、クソ脚本としか思えない。原作にどこまで準拠しているのか知らないが、原作もそうだとしたら、原作もクソだと言わざるを得ないと思う。

●梨花がみぃたんの実の父親である水戸と別れた理由は病気のせい     
●梨花がみぃたんを引き取ったのは子どもを産めない体だったから
●金持ちの泉ヶ原と再婚したのはみぃたんがピアノを弾ける環境を提供したかったから
●泉ヶ原のもとを去ったのは彼が年取っているので自分が病気で死んだ後に彼もすぐ死んでしまうとみぃたんが困ると思ったから
●同級生だった森宮と再婚したのはまだ若いのでみぃたんが結婚するまで面倒をみてくれそうだと思ったから

さらには、

●梨花はみぃたんが水戸宛に書いた手紙を出さずに隠していた
●水戸からみぃたん宛に届いた手紙も隠していた
●泉ヶ原にのみ消息を伝え病気治療の支援をしてもらっていた

そんなことも明かされるが、そんなご都合主義だらけの展開のものを“いい話”として描かれてもなんだかなという感情しかわかない…。
“は?”って感じだ。

そのほか、さんざん、優子(成長したみぃたん)をいじめていた同級生の女子が、優子と現在の父親である森宮の血がつながっていないと知った途端、いじめをやめるのも意味不明だ。

まぁ、優子の担任が進路指導で希望を無視して教え子たちを有名大学へ行かせようとしている描写はリアリティがあると思った。
結局、教え子が有名大学に入れば自分や学校の点数稼ぎになるけれど、短大や専門学校、無名大学ではそれができないから有名大学を受験させようとしているだけだしね。落ちて、その後の人生設計が狂ってしまった時のことなんて考えていないんだよね、教師連中は。

というわけでツッコミどころだらけの作品だったけれど、クソ映画とか、今年のワースト映画候補と言いたくなるかというと、そうでもないんだよね。

何しろ、永野芽郁が可愛いからそれだけで満足できてしまう。まぁ、血がつながっていない設定とはいえ、田中圭と永野芽郁が親子というのはどうかと思ったけれどね。実の子だったら中学生くらいに生まれたって感じの年齢差だしね。
そういえば、やたらと女性観客ばかりで男がほとんどいなかったが、もしかすると、彼女たちは田中圭のファンなのかな?あるいは、同級生役の岡田健史のファンか?
あと、永野芽郁演じる優子の子ども時代=みぃたんを演じた子役が永野芽郁っぽい雰囲気があって良かった。

そして、何よりも泣けるんだよね。クソ脚本なのに…。

後半なんて涙で目をあけるのがつらかったしね。まぁ、並行して描かれていた女子高生の話と子どもの話が同一人物だと明かされてからがダラダラ長いとは思ったけれどね。

とりあえず、この作品って両親が離婚したとか、両親のどちらかが出ていったまま音信不通とか、そういう経験がある人なら涙なしには見られないよ…。

自分が10代の頃、父親が何度か家出をしたことがあった。そして、自分も妹も社会人になったのを見計らって彼は母親と離婚した。
その後、妹とは何度かコソコソと会っていたようだが、彼は自分との接触は避けていたようだ。
自分と会ったのは、妹の結婚式と祖母の葬式を除けば、家を売り払う時に書類にサインをしてもらうために会ったのが唯一のケースだ。

そんな自分から見ればクソ野郎だった父親だったが、ある日突然、“がんが悪化したのでバリアフリー対応の集合住宅に引っ越したい。だから、保証人になってくれ”と連絡をしてきたんだよね。

そして、その手続きをしている最中に父親は死んだ。

本作で行方をくらましていた梨花が死の間際に、みぃたん(子ども時代の優子)が父親宛に書いていた手紙を出さずに隠していたことを謝罪する文章と隠し持っていた手紙を優子に送ってきた行動に近いなと自分は感じてしまった。

それから、父親と離婚した際、母親は旧姓に戻ったことから、自分と同居しているのに名字は異なるという状態になった。
さらに、父親が死んだ際に、自分は父親の戸籍に残されていることが判明した。その戸籍には電話で数回話したことがあるだけの父親の再婚相手も入っているし、さらにその再婚相手には息子もいるらしいということも分かった。

本作ほどではないものの、複雑な家族関係を持っている者としての視点で見ても、本作は号泣ものだった。

まぁ、泣ける映画、笑える映画が傑作かというと必ずもそうではないし、死ぬほど退屈な映画が歴史に残る名作になることだってある。
つまり、少しでも評価できる要素があれば今年のワースト映画にはならないってことかな。


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