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早朝始発の殺風景

本作をサスペンスやスリラー、ミステリーとして見ると非常にガッカリすることは間違いないと思う。

おそらく、自分のように原作小説やそのコミカライズ版を読まずに本作を見た人は、第1話で提示された女子高校生が被害にあった通り魔事件の犯人をその被害者と同じ高校の映画研究部の部長の加藤木と、彼女の親友の殺風景(すごい名前だ…無理もいいところ)が突き止めていく話だと思ったのではないだろうか。

しかし、この2人がメインで登場するのは全6話のうち第1話と最終話のみで、2〜5話に関しては冒頭とエンディングで犯人探しの進展具合が提示されるだけだった。

その2〜5話で語られていたのは、この2人と同じ学校に通う高校生たちの日常生活だ。
毎回、異なるグループが登場し、その中のメンバーの不可解な言動の謎が明かされていくという展開になっている。
それもサスペンスやスリラー、ミステリーと言えばそうなんだろうが、一般的にイメージされるこうしたジャンルのものとは趣が異なっている。
しかも、この学友たちの日常生活はほとんど通り魔事件とは関係なく進行している。

また、メインのエピソードとなっている加藤木と殺風景の話についても、主軸は一応、殺風景の親友を襲った通り魔を突き止め、こいつに制裁するというサスペンスやスリラー、ミステリーっぽい感じになってはいるけれど、加藤木や殺風景が謎解きするのは犯人が犯行に至った理由とかではなく相方の不可解な言動だからね…。

それに犯人は加藤木が設置したカメラに映っていたということで簡単に見つかってしまう。
彼の映画研究部の部長という設定は彼が犯人探しのためにカメラを操作するという展開のためだけに用意された設定にしか見えない。
サイコ・サスペンス映画の話をしておきながら、ブラッド・ピットとモーガン・フリーマン主演作品のタイトルを思い出せないなんて、映研部長失格でしょ!なのに、殺風景は“さすが映画研究部”とか言っているんだから意味不明だ。

もしかすると、今の10〜20代って映画通を名乗る連中でもこの程度しか映画に関する知識を持っていないのか?そりゃ、日本映画が世界から遅れを取るわけだ…。
そして、映画にそんなに興味がない人からすれば、ひと昔前の映画、しかも、洋画の話をして、外国の俳優の名前をあげただけでも博識に見えてしまうってことなのかな?だから、“さすが!”なのだろうか。

それから通り魔事件と言っているけれど、これって、レイプだよね?作中でははっきりと言及されていないが、通り魔なのに襲われた女子高生は身体的な深い傷を負っているようには見えないし、押し倒されたような場面もあったし、その後、登校できなきいというか怖くて外に出られなくなるほどトラウマを抱えていたりする様子を見ると、そうとしか思えないのだが。
おそらく、高校生の話でレイプ被害の描写をはっきりと描くと、いくらWOWOW作品でも批判される可能性があるということで濁してしまったのかな?

構成や内容に関する不満を言っても仕方ないんだけれどね。
原作は全5章からなる短編プラスエピローグという構成だそうだから、細かい設定はさておき、このドラマ版の展開もそれに準じているのだと思う。
というか、Wikipedia記載内容レベルでしか原作の内容を把握していないが、それを読む限りでは原作よりドラマ版の方がサスペンスやスリラー、ミステリーっぽく見せようと努力しているように思えた。

とはいえ、本作がクソドラマだったかというとそうではない。
まず、WOWOW作品ということもあり、画が安っぽくなっていない。今期、フジテレビで放送されていた同じミステリー系作品である「親愛なる僕へ殺意をこめて」なんて、内容に合わないペラペラな画質だったが、本作は少なくとも全国公開される日本映画レベルの画質にはなっている。

それから、若手注目俳優を次から次へと惜しみなく使っているのもWOWOW作品だからこそできたことだと思う。民放キー局のゴールデン(プライム枠)のドラマだと、毎週主人公が変わるドラマなんてスポンサーや視聴率のことを考えるとできないからね。深夜ドラマではこうした構成のものはあるけれど(最近だと「明日、私は誰かのカノジョ」とか近い構成だった)、それでも、ここまでの人数を投入はできないからね。

あと、サスペンスとしては物足りないかも知れないが、青春群像劇として見ると結構面白かったりもする。

そして何より、本作の最大の魅力は山田杏奈だ。彼女のセーラー服姿はめちゃくちゃ可愛い!
それに彼女は不機嫌な表情が似合うんだよね。
「幸色のワンルーム」にしろ、「ひらいて」にしろ、何かに怒っているようなキャラクターが本当に似合う。
まぁ、最近は単なる老害になってしまったけれど、かつてのビル・マーレイみたいな感じかな。
「ゴーストバスターズ」シリーズ、「3人のゴースト」、「恋はデジャ・ブ」、「ロスト・イン・トランスレーション」など、彼が得意とするのはいつもイライラしているような、つまらなそうな表情をしている役だったしね。

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