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グレイマン

Netflix作品の劇場上映にはいくつかのパターンがある。

初めて日本で劇場上映されたネトフリ作品は2019年3月公開の「ROMA/ローマ」だ。同作品は日本でも18年12月に配信開始となっていたが、アカデミー賞で3部門受賞を果たし、その中には監督賞という主要部門での受賞もあったことから、さすがに映画ファンの“劇場公開しろ”という声を無視できなくなったというのが、頑なに日本での劇場公開をしなかったネトフリが変節した理由だと思う。

日本製のアニメ映画「泣きたい私は猫をかぶる」もこれと似たケースだ。
同作は元々は、東宝映像事業部の配給で20年6月に全国公開される予定だった。しかし、新型コロナの感染拡大による影響で公開が延期され、それに伴って、ネトフリが配給権を獲得し、ネトフリ作品として6月に配信されることになった。

でも、同作を“やっぱり、映画館で見たかった”という声が根強かったことから、各地での劇場上映も実施され、東京でも同年10月にはミニシアターでの上映ではあるものの、劇場公開が実現した。

そして、一番多いネトフリ作品の劇場上映のパターンは2019年以降、日本でも秋から年末にかけての恒例となった賞レース向けの作品を中心に配信から1〜2週間先行して上映するというものだ。

2019年は
「キング」
「アースクエイクバード」
「アイリッシュマン」
「失くした体」
「マリッジ・ストーリー」
「2人のローマ教皇」
の6作品が上映され、このうち4作品がアカデミー賞にノミネートされた。

2020年は
「シカゴ7裁判」
「ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌」
「Mank マンク」
「ザ・プロム」
「ミッドナイト・スカイ」
の5作品が上映され、このうち4作品がアカデミー賞にノミネートされた。

2021年は
「THE GUILTY/ギルティ」
「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール:報復の荒野」
「tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!」
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
「消えない罪」
「Hand of God -神の手が触れた日-」
「ドント・ルック・アップ」
の7作品が上映され、このうち4作品がアカデミー賞にノミネートされた。

いくら、社会的なメッセージとか、人種的な問題を扱っていたとしても、これはノミネートされないでしょってものまで上映されたりもしているけれど、それでも毎年、アカデミー賞ノミネート作品を4本も上映しているのだから、映画ファンにとってはありがたい企画だとは思う。

でも、これらの先行上映作品は、TOHOシネマズなど邦画大手系のシネコンで上映されることはない。あくまで、配信作品であり、配信作品は映画館の敵だとしてこれらの劇場では上映を拒否されている。だから、これらの作品はイオンシネマやミニシアターでの上映が中心となっている。

「ROMA」や「泣きたい私は猫をかぶる」は先行して配信されていた作品が後に劇場公開されたパターンだが、中には、配信シリーズの総集編を劇場作品として公開するケースもある。

20年7月配信開始のアニメシリーズ「日本沈没2020」の総集編映画として11月に公開された「日本沈没2020 劇場編集版-シズマヌキボウ」、20年4月配信開始のアニメシリーズ「攻殻機動隊 SAC_2045」の総集編映画として21年11月に公開された「攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争」がそうしたケースの作品だ。ちなみに、両作品ともネトフリ以外の会社が配給しているうえに(前者はエイベックス、後者は東宝映像事業部)、配信版とは編集が異なるということで、「ROMA」や秋から年末にかけて恒例となっている連続上映作品を拒否しているTOHOシネマズなど邦画大手系のシネコンでも上映された。

また、シリーズものの総集編でない単発の邦画作品が配信に合わせて劇場公開されるケースもある。

21年11月に公開された「ボクたちはみんな大人になれなかった」は、「日本沈没」や「攻殻機動隊」の総集編映画同様、ネトフリでない映画会社の配給によって劇場公開された(ビターズ・エンド)。しかし、劇場上映版と配信版が同内容であること、そして、劇場公開日と配信開始日が同じであることが嫌われ、邦画大手系のシネコンでは上映されなかった。

一方、ことし5月に劇場公開されたアニメ映画「バブル」は4月に先行配信されているのにもかかわらず、邦画大手系のシネコンで上映された(ちなみに配給はネトフリではなくワーナー)。
配信版はNetflix版、劇場公開版は劇場版と呼ばれていて、基本的な内容は同じではあるものの一部異なる箇所があるということで、かろうじて別作品とみなされたということなのだろうか。

そして、本作「グレイマン」はこれまでのネトフリ作品の劇場上映とは異なるタイプの公開のされ方となった。

賞レースに参戦しそうな作品だから、国産作品だから、映画館で見られる機会を与えようというものでも、配信されたものとは異なるバージョンを提供しようというものでもない。

要は、「アベンジャーズ/エンドゲーム」などマーベル・シネマティック・ユニバース作品を何本も手掛けているヒットメーカーであるルッソ兄弟の新作、しかも、アクション大作を配信でしか見られないのは勿体ない。だから、映画館のスクリーンで見たいという映画ファンの要望に応えただけの劇場上映だ。  

そして、驚いたことに上映劇場は満席状態なんだよね。これまでは、賞レース向け作品でも、国産作品でも、ネトフリ作品の上映館が満席になることなんて、ほとんどなかったけれど、今回は違うんだよね。
しかも、邦画大手系のシネコンではかからないから、ほとんど上映告知がされていないというのも、これまでの賞レース向けネトフリ映画と同じなのに、ちゃんと観客が集まっている。

結局、いかにも賞レースを狙ったような作品はポリコレ要素が強いし、国産作品も海外展開を意識しているので、決して日本人好みの内容とは言えない部分もある。
だから、これまでのネトフリ映画は一部映画館で上映されてもガラガラだったってことなのかね。

これまでは海外のネトフリ作品、特に娯楽寄りの作品は日本の映画館で見る機会はほとんどなかったけれど、これからはこのような娯楽寄りの作品が上映されるケースが増えるのかな?そうなるといいな。

最近、ネトフリは契約者数が伸びていないことから、リストラも始まっているようだし、製作中止になっている作品もあるようだし、今後はネトフリの方針も変わっていくのかな?

まぁ、ロックダウンとか緊急事態宣言のようなコロナ対策を各国がやらなくなれば、映画ファンは普通に映画館で映画を見に行くようになるわけで、配信で作品を見ているヒマもなくなるから、金が勿体ないと思う人は解約するよね。

それから、配信映画史上初のアカデミー作品賞受賞をアップルの「Coda コーダ あいのうた」に持っていかれたってのも、ネトフリとしてはショックだと思うしね。4年連続でアカデミー作品賞候補を送り出すほど、賞レース向けの作品を手掛けることに力を入れていたのに、あっさりと他社に先を越されてしまったわけだしね。モチベーションが下がっている可能性もあるよね。

作品自体に関して語っておこう。

ぶっちゃけ、細かいことはどうでもいいから、金をかけた派手なアクションを2時間ちょっとの間、楽しもうというだけの映画だった。

最近の諜報員もの映画というのは、「ミッション:インポッシブル」シリーズのようなスタント重視の作品か、「ボーン」シリーズのようなリアリティ重視の作品、あるいは、ダニエル・クレイグ版「007」シリーズのようなドラマ性重視の作品って感じになっているけれど、本作のように世界各地を飛び回り、それぞれのロケーションでドンパチを繰り広げるだけという、そういう純粋な時間潰しのための娯楽映画もたまにはいいよねってことなんだろうね。

「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」に出ていたアナ・デ・アルマスとか、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のジュリア・バターズ(ワンハリの時より成長している!)とか女優陣が最高!
勿論、主演のライアン・ゴズリングも素晴らしい!

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