大名倒産
主演が神木隆之介で母親役が宮﨑あおい。しかも時代もの。嫌でも現在放送中の朝ドラ「らんまん」を想起させる組み合わせだ(こちらでは宮﨑あおいは母親役ではなく主人公を見守るナレーション担当だが)。また、主人公の幼なじみ役が「おちょやん」の杉咲花なので尚更、朝ドラ感が増している(「おちょやん」も和装だったしね)。
朝ドラというのは恐ろしいもので、主演だろうと助演だろうと、出演をきっかけにそれまでのその俳優に対する評価が一変することが多い。
黒島結菜や福原遥は好感度の高い女優だったが、出来の悪い朝ドラに主演し(前者は「ちむどんどん」、後者は「舞いあがれ!」)、しかも、その演じた主人公が視聴者の共感を得にくいキャラクターであったことから本人の印象も悪くなってしまった。
「ひよっこ」は好感度の高い作品だったこともあり、同作の主演・有村架純の好感度上昇にも貢献したし、伊藤沙莉や佐久間由衣などはこの作品をきっかけに注目度が増していった。
川栄李奈はデキ婚とその際の相手の元カノに対する逆ギレでイメージが一気に悪化したが、2度目の朝ドラ出演でヒロイン役としては初となる「カムカムエヴリバディ」で高校生からアラ還までを演じわけ、殺陣や英語の台詞も披露したことから、“やっぱり、川栄はすごいや”と再評価につながった。
清原果耶は「あさが来た」で注目され、2度目の朝ドラとなった「なつぞら」で若手演技派としての評価が定まった。しかし、3度目の朝ドラで初主演の「おかえりモネ」で演じたキャラの設定が不完全燃焼だったため、彼女に対する評価も鎮静化してしまった。
「おちょやん」で主人公の父親役だったトータス松本は、その演じたキャラがあまりにもろくでなしだったため、トータス自身もクソ野郎に見えて仕方ないという視聴者が続出した。
まぁ、こういう現象は仕方ないんだよね。
朝ドラというのは通常の日本の連ドラとは異なり、半年間にわたって放送される。しかも、15分枠とはいえ週5回(コロナ前は6回)の放送だからエピソード数が多い。
そして、大抵の朝ドラは波瀾万丈な人生を送ってきたキャラクターたちの生涯なり半生が描写されている(「ひよっこ」のように、たった4年間しか描いていない作品もあるが)。
だから、視聴者は通常のドラマや映画よりキャラクターに共感や反感を抱きやすくなるし、演じた俳優をキャラクターと同一視しがちになってしまう。
現時点での「らんまん」における神木隆之介は、演じたキャラクターに自分勝手なところがあるため、「ちむどんどん」や「舞いあがれ!」の主人公同様、嫌われやすい要素をはらんでいる。
ただ、「らんまん」のストーリー展開は「ちむどんどん」や「舞いあがれ!」に比べると破綻していないので、そこまで批判されていない。
とはいえ、「カムカムエヴリバディ」のようなトンデモ展開や、「おちょやん」のような視聴者全員にとって共通の敵みたいな存在(先述したトータスが演じた父親)もいないので、ネット上での盛り上がりにも欠ける。
そんなところだろうか。
間もなく前半戦終了となるが、やっと、主人公がヒロインと結ばれ、本格的に植物学者としての道を進みはじめたばかりなので、作品や神木隆之介に対する評価が出るのはこれからって感じかな。
宮﨑あおいについても触れておこう。
単発ドラマへの出演や朝ドラのナレーションはあるし、アニメ映画「かがみの孤城」では声優を務めているが、実写映画への出演となると、2017年公開の「ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶~」以来だから、実に5年半ぶりとなる。
いくら、この間に再婚・出産・育児があったとはいえ、宮﨑あおいクラスの演技力を持つ女優がこんなにも長いことスクリーンに現れなかったのは映画業界にとって損失だったと言わざるを得ないと思う。
というか、再婚前からそうなんだけれど、宮﨑あおいって演技力の無駄使いと思えるような出演作が多いんだよね。
同世代の綾瀬はるかとか長澤まさみ、新垣結衣なんかは誰がどう見てもツッコミどころ満載の映画ばかりに出ているから、“なんじゃこりゃ?”と思うような内容でも気にならないんだけれど、宮﨑あおい出演作品って、真面目に作っている作品が多いから、内容が“は?”だとクソ映画にしかならないんだよね。
そんなわけで不安を抱えながら、久々の顔出し出演映画を見ることになった。
まさか、顔出しの出番があっという間に終わるとは思わなかった…。というか、顔出しはオマケでメインはナレーション担当だった。
神木隆之介が主演で、宮﨑あおいがナレーターって、「らんまん」とまるっきり同じ布陣じゃん…。
ただ、そのナレーションに背景となった時代になかった言葉(たとえば、サブスクリプションとか)を使うのはどうなんだろうかと思った。
あと、わずかな顔出しシーンの演技を見ていると年齢不詳のアイドル女優みたいな感じだった。お茶目な仕草とか見せていたしね。もしかすると、宮﨑あおいは吉永小百合路線を進んでいくことになるのかな?童顔女優って、永遠のアイドル女優になるか、吉行和子みたいに可愛いおばあちゃんになるしかないのかな?
作品全体としては安っぽいVFXややたらと使われる現代風の言葉使いは気になった。メタな場面が多いのもちょっとねと思った。
でも、最近の邦画にしては珍しく、エンタメ性と社会性が両立した良作だった。しかも、現在の社会情勢を風刺していてよくできた作品だと思う。
本作における主人公をはめようとした勢力は明らかに自民党とその周辺の連中をイメージしているのだと思う。
⚫︎自民党
⚫︎増税するよう自民党に圧力をかける役人
⚫︎国や自治体絡みの案件で中抜きして儲ける電通や竹中と、そうした勢力からのキックバックで私腹を肥やしている自民党の政治家
⚫︎自民党と結託することで優遇措置を受け内部留保している大企業
⚫︎生活が苦しくなっているのに自民党を支持し続ける国民
こうした者たちを批判する映画なんだろうなと思った。
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