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アイドルと武道館

最近、地下アイドル(オリコン上位にランクインしたり武道館公演を行ったりしているものの世間的には地下扱いされているいわゆる半地下を含む)やそのファンを巡る不祥事の報道が多い。

そして今週になってからは26時のマスカレイドなきあとの半地下界隈のトップ争いをしているようなグループの主要メンバーの卒業が相次いで発表された。

これまでにリリースされたCDシングル全てがオリコンのトップ10内に入り、最新シングル“シンガロング・ワールド”のリリース時には地上波の音楽番組にも出演しているchuLaからは、現在のメンバーでは最古参である佐藤まりんが卒業を発表した。
まりんは1年以内に卒業し、それまでに以前から目標としている日本武道館公演の実現を目指したいと述べている。


一方、#ババババンビからは吉沢朱音と池田メルダの2人が5月24日の単独公演をもってグループを卒業すると発表された。朱音はグループの多くの楽曲で作詞を担当している音楽面の要だ。しかし、卒業の発表の仕方は不透明極まりないものだった。

メジャーデビュー発表→新メンバー募集発表→2人のメンバーの卒業発表

という流れは明らかにおかしい。

普通は、

2人のメンバーの卒業発表→新メンバー募集発表→メジャーデビュー発表

というのが、今いるメンバーにもこれから入るメンバーにも、ファンにもしこりを残さないやり方だと思うんだけれどね…。

しかも、メンバーの卒業が運営やメンバーが発表する前にチケット販売サイトを通じてバレてしまった=情報管理ができていないということだからね…。

そして、後追いで結局、朱音&メルダおよび運営側も卒業を発表することになったが、その際の朱音のコメントが非常に不穏なものであったこともドルオタの不信感を募る結果となってしまった。

その発言内容は、これまで#ババババンビは武道館公演を目指してきたが、今では誰でも武道館公演をできるようになってしまい価値がなくなったと捉えられても仕方のないものだった。

chuLaと#ババババンビ、両者共通のキーワードは武道館だけれど、前者はやや前向き、後者はネガティブな感じだろうか。

確かに武道館公演のステータスってひと昔前に比べれば下がってしまったと言われても仕方ない面はあると思う。

最近でこそフルキャパの公演も戻ってきてはいるものの、コロナ禍に入ってしばらくは感染症対策として収容人数を減らして4000人程度のキャパで武道館公演を行うアーティストが多かった。コンサート開催時の武道館のキャパはステージやアリーナ席の配置にもよるが一般的には8000〜1万人と言われているので半分、場合によっては半分以下だ。だから、本来なら武道館公演を行うほどの人気・実力がないアーティストが特例措置のおかげで武道館公演ができたケースについて武道半などと揶揄する言葉も生まれている。

武道館公演のハードルを下げたのは個人的には2020年の年末に武道館公演を実施した眉村ちあきだと思っている。

一般の邦楽や洋学では最新CDの売り上げがイマイチでも、新曲の再生回数が少なくても、過去のヒット曲や名曲を聞きたいとか、友人とか恋人、家族などの付き添いでライブにやってくる人が多いが、アイドルの単独ライブにやって来る観客はほぼ100%が最新リリース作品をチェックしている人間だ。

だから、オリコン上位に一度も入ったことがない彼女が武道館公演をやるのは無理があるんだよね。

おそらく、武道館公演には少なくとも彼女のメジャーデビュー後のCDを買ったことがある人で首都圏在住の人はほぼ全員来たのではないかと思う。

そして、この武道館公演を機に彼女の人気は一気にランクダウンしてしまったようにも感じる。

やっぱり、彼女の音楽って元々はライブハウス向きなんだよね。武道館公演を行うまではPCから音源を流しながら、それに合わせて時々、ギターを弾いたりするくらいのシンプルな曲が多かったからね。だから、武道館公演を見て、何か違うと思った人が多いんじゃないかと思う。

しかし、名目上は武道館公演を成功させたことになったので、これ以降、多くのアイドルが武道館公演を行うようになった。

とはいえ、そのほとんどが身の丈に合っているとは言えないものだった。

一般的には武道館公演だと邦楽でも洋楽でもS席とされる席でも天空席と呼ばれる上階後方席をあてがわれることが多々あるが、この数年間に武道館公演を実現させたアイドルの多くは、グッズ付きとかお見送り会参加権付きなどの高額チケットで客を釣り、逆に一般のライブでいうところのA席や天空席に相当するようなブロックの席は低価格にしてライト層を動員するというやり方にして、なんとか客席を埋めているのが現状だ。

女子人気が高い、若者人気が高いというのをアピールしたいために、=LOVEは今年3月の武道館公演では30代以上の男の客は限りなく天空に近い席に追いやっていたが、21年1月の最初の武道館公演では、そうした30代以上の男に来てもらわないと埋まらないこともあり、自分のような者でも最前席にありつけたくらいだったからね…。

イコラブですらそんな状況だったのだから、まぁ、武道館公演を大きな目標としていた#ババババンビ・朱音としては、水増し武道館公演が相次ぐ現状に不満を持ち、武道館公演を目標にすることに意味はないのではと思うのも分からないでもないんだよね。

そもそも、アニメ化やドラマ化もされたコミック「推しが武道館いってくれたら死ぬ」というのは、地下アイドルやローカルアイドルが武道館公演を実現するなんてほとんど可能性がなく、だからこそ、ファンとしてはそれが実現したら、これ以上望むものはなくなってしまうということのたとえになっているわけだしね。

アイドル業界はコロナ禍に入ってしばらくは、それまでの接触系イベントに頼りすぎていた収益モデルから脱することができずに、解散するグループや体制を変更するグループ、卒業するメンバーが相次いでいた。
そして、今度はコロナ解除モードに入ったことにより、新たなビジネスモデルを模索したり、コロナ前のやり方に戻ったりしなくてはならなくなった。だから、それに対応できないグループは解散や体制の変更、メンバーの卒業を余儀なくされるってことなのかな。

基本、太客で成り立っている業界は、アイドルにしろ、水商売にしろ、風俗にしろ、何にしろそうだけれど、世の中の変化についていけないところは淘汰されるってことなのかな。それは、アイドルや運営だけでなく、客にも言えることなのかも知れないが。


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